登場1カ月でCM好感度トップを獲得

 花王が5人のキャラクター選びで重視したのは、「ストーリーの中で嫌みなく伝えられる人。キャラがかぶらずそれぞれの世界観が確立している人。芝居ができる人」(野村氏)。

 その条件をクリアして名前が挙がったのが、松坂桃李、菅田将暉、賀来賢人、間宮祥太朗、杉野遥亮。いずれも旬真っ盛りの人気若手俳優だ。「この5人のスケジュールが合わせられたこと自体が奇跡だった」と野村氏自身も驚きを隠さない。

 革新性を掲げる商品だけに、伝えたい特性はたくさんある。そのため花王は今回「伝えたい特性ごとにCMを分ける」ことにした。

 制作したCMはキャラクターの人数と同じ5種類(CMのストーリー設定を紹介する「ゼロ洗浄、はじまる」編を加えれば全6種類)。1本のCMで1つの特性を伝達し、5種類のCMを“全部クリア”すればアタックZEROの本質が浮かび上がる。とすれば、そこに不可欠なのはCMシリーズ全体を貫く魅力的なストーリーだ。ここでも花王はとっぴな展開を仕掛けてきた。それは洗濯を心から愛している者だけで結成された社会人サークル、「#洗濯愛してる会」のメンバーが、待ち焦がれていた画期的な洗剤を手に入れ、各自の得意分野を生かしてアタックZEROを分析するという、おそらく“あり得ない”設定だった。

 クリエーティブディレクターの篠原誠氏は、「洗剤史上かつてない革命的な商品を、洗剤史上かつてない表現で伝えることを狙った」と企画意図を明かす。

 キャストにはそれぞれ、「トーリくん(リーダー)、スダくん(人並み外れた嗅覚の持ち主)、カッくん(実験大好き科学マニア)、ショータロー(ムードメーカー)、スギノ(人にも衣類にも優しい弟分)」とニックネームや詳細なキャラクターを設定し、サークルの世界観をがっちり固めた。

 CMを見た視聴者からの反響は大きく、ツイッターでは10万人以上がツイート。CM総研の19年4月後半の好感度ランキングでは98%という数字を獲得し、調査対象2164銘柄の首位に立った。

 発売から1カ月余りで5本もの異なるCMを投入する理由を、野村氏は「発売から2カ月が(新商品をアピールするのに適した)ゴールデンタイム。ここでトライアルを稼がなくてはいけない」と話す。

 トップブランドの大リニューアルだからこそ、短期決戦で消費者の手に届けなくては、せっかく打ち出した革新性のイメージが雲散霧消しかねない。惜しげもないイケメン俳優の“大量投入”や、1本のCMで1つの機能訴求というぜいたくなクリエイティブなど、思い切ったコミュニケーション戦略に「社運」という言葉がにじんでいる。

 5月6日からは菅田の新CM「消臭力テイスティング」編がスタート。5月27日には杉野が「洗剤残りゼロ」を伝える第6弾が放映予定だ。ちなみに花王によると「#洗濯愛してる会」のCMシリーズは5つの優位性を伝えて終わり、ではないらしい。意表を突く展開で視聴者を引きつける続編に期待が高まる。

主要駅にもOOHを張り出すなど大々的にアピール
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