※日経トレンディ 2019年4月号の記事を再構成
経営やリーダーシップを学びたい。そんな意外なニーズで爆発的に読まれている漫画がある。中国の春秋戦国時代を舞台とした『キングダム』(原泰久著・集英社)である。多くの企業経営者と親交がある経営学者・入山章栄氏は、「特にスタートアップ経営者に聞くと、今、誰もが『キングダム』を読んでいる。一種の共通言語と化している」と言う。
早稲田大学ビジネススクール准教授
三菱総合研究所で自動車メーカー、国内外政府機関の調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院で博士号(Ph.D.)を取得。13年から現職。著書に『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』(日経BP社)など
以前なら、日本の戦国武将や「三国志」の物語をビジネスに応用して読んでいた人もいるだろう。今、それが『キングダム』へと変化しているのだ。『キングダム』の主人公は類いまれなる武力を持つ孤児「信」。親友の死を機に中華統一を目指す後の始皇帝、王の「政」と出会い、軍の一員となる。隣国の強敵との戦いで次々と活躍を見せ、大将軍へと上り詰めていくというストーリーだ。
これがなぜ、現代の仕事に役立つのか。入山氏はこう分析する。「秦の始皇帝が統一をする前の中国と同じく、今のビジネス界も、予測不可能な乱世」。その中で、信の立身出世が、スタートアップの軌跡にぴたりと重なるのだ。一方、大企業の一員にも確実に響く。派手な軍才はなくとも地道な努力で出世する壁(へき)、偉大な父を持つ子としての使命を背負う王賁(おうほん)や蒙恬(もうてん)……「誰にでも自分と重ね合わせられる登場人物がいる」(入山氏)。
登場人物に共感するというだけではない。リーダーの振る舞い、部下への指示、他社とのアライアンス、事業戦略の立て方……至る所に、実際の仕事に役立つ要素が隠されている。「世界の経営学に通じる」と入山氏が評する『キングダム』の読みどころを分析してもらった。
スタートアップ
最初は野心。でも、リーダーの理念に引かれていく
大企業
組織の一員として、どんな人も必要とされることを実感
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