カジュアル衣料大手のストライプインターナショナル(岡山市)が、苦戦を強いられていた中国市場で2018年下期から事業を好転させている。現地法人トップに中国人を起用し、ECとリアル店舗を組み合わせた「新小売」戦略で着実に成果を出しつつある。同社の新小売戦略を2回にわたって追う。

ストライプインターナショナルがモデルケースの1つと位置付ける上海店
ストライプインターナショナルがモデルケースの1つと位置付ける上海店

 「アリババ集団が運営する中国最大のECサイト『天猫(Tモール)』上に開いた旗艦店に、2018年秋からAI(人工知能)を活用したチャットボットを導入して消費者とのコミュニケーションを密に取るようにした。すると、チャットボットと楽しく会話できるから商品を購入するという客が増え、ECサイトからの売り上げが増え始めた。今ではECサイト全体の売り上げの30%が、チャットボットでのやりとりを経由したものになっている」

Tモール上の旗艦店に導入したチャットボット。キャンペーン情報などを伝えている
Tモール上の旗艦店に導入したチャットボット。キャンペーン情報などを伝えている

 チャットボットの売り上げへの貢献をこう語るのは、18年4月に、「earth music&ecology(アースミュージック&エコロジー)」や「AMERICAN HOLIC(アメリカン ホリック)」といった複数ブランドを擁するカジュアル衣料大手、ストライプインターナショナル(以下、ストライプ)の中国法人、ストライプチャイナで総経理・董事(President & Director)に就いた陶源氏だ。ドイツの小売大手メトログループの中国法人トップからストライプに転じた陶氏は、総経理に就任してすぐ、EC(オンライン)とリアル店舗(オフライン)を組み合わせた「新小売(ニューリテール)」戦略を打ち出した。

ECとリアル店の双方を生かして顧客満足度を引き上げる

 中国では若者はEC、それもスマートフォンを使ったモバイルコマースで買い物をするのが当たり前だ。購入前に「調査」し、購入途中で「議論」し、購入後には「コメント」を残すのが習慣化している。それも地方の若者ほどその傾向が強い。なぜなら、通信会社がパケット使い放題の料金プランを上海や北京などの大都市で導入したのは18年半ばだが、地方の5線級、6線級の都市ではテストのため5年前から導入されていたからだ。

 一方、リアル店舗は大都市圏であっても若者の来訪が少なく、顧客が入れ替わらずに、1年たつと平均年齢が1歳上がるような店が珍しくない。ECで購入している若者にとってリアル店舗の多くは、どうしてもそこで買いたいと思わせるだけの魅力がなかったからだ。陶氏は「ストライプが扱う衣料は若者向けが多いが、それだけではない。そこで、ECとリアル店舗のどちらかを重視するのではなく、新小売戦略を導入して、顧客がECとリアル店舗のどちらで買っても満足できる体制を整えることにした」と語る。

 実際、ストライプは、11年に、中国市場をアジア展開の要と位置付けてリアル店舗を初めて出店。以後、一時は上海や北京といった大都市を中心に、主に傘下の単独ブランドを掲げた小型店で100を超える店舗を展開した。しかし、顧客層が重なる海外ブランドとの競合で苦戦を強いられたため、不採算店を順次閉鎖。2019年初めには10店強まで店舗数が減るなどもくろみが外れていた。陶氏はそこに、顧客がECとリアル店舗のどちらで買っても満足できる新小売戦略を持ち込んで改革を図ったわけだ。

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