文具メーカーのナカバヤシが販売する「LIFFESTYLE TOOL(ライフスタイルツール)」は、文具や趣味の道具、コスメなどの小物を整理するための収納用品だ。発売以来、順調に売り上げを伸ばしており、累計出荷数は50万個を突破した。「素材を変える」発想が成功に導いた。
ライフスタイルツールは2016年4月に「ボックス」と「ファイル」の2タイプ、17年1月に「ペンスタンド」「ウォールボックス」「ドキュメントファイル」「レターケース」「収納カバン」の5タイプを発売し、現在はバリエーションが7タイプまで広がっている。収納用品は多くの企業がさまざまな商品を販売しているが、一つの商品が50万個ものヒットを飛ばす例はこれまであまりなかったという。
共通するのは、仕事中は開いて使用し、仕事が終わればサッと閉じてコンパクトにしまえる点にある。閉じたケースは箱やファイルのような形状になり、デスクや棚の上にすっきりと置いておくことができる。部屋やデスク周りを簡単に整理整頓でき、美しく見せられるのが人気の秘密だ。
本体は紙製で、ケースを開けると、幅や深さの違う数種類のポケットが登場。ペンやハサミ、のりなどさまざまな文具や小物を、それぞれのポケットに収納できる。
「新しい収納用品」を作れ!
ナカバヤシの企画部門は「既存の製品に、付加価値を加えた製品を開発していく」という大きなテーマを持っている。ノマドやフリーアドレスなど最近のオフィス環境の変化も踏まえ、16年ごろには、「プラスチック収納以外の、新たなカテゴリ製品を考えてみよう」という動きがあった。
当時のオフィス用収納用品といえば、プラスチック素材の箱型が多く、内部には仕切りのないものが一般的だった。プラスチックでは成形できる形に制約があるため、細かいポケットなどを作るのが難しかったからだ。そのため、収納用品に小物を収納しても、中で散らかり、使いにくいと感じているユーザーが多かったという。
「そこで考えたのが、収納用品の素材を紙に変更することだった。紙なら、どんな形でも比較的簡単に作れるので、複雑な構造も再現できるだろうと思った」(ナカバヤシCCカンパニー企画部リーダーの笠原広平氏)。
素材の制約を取り払い、自由な形の収納用品を作ろう──笠原氏がインスピレーションを受けたのは、ジュエリーボックスやプロ用のコスメ用品、東京の工芸品である江戸指物の箱だった。それらに共通する「箱を展開すると、たくさんの引き出しやポケットが出てくる」という構造を、文具に落とし込もうと考えたのだ。
このアイデアを企画部内で話したところ、企画部リーダーの寺岡美里氏も同様のコンセプトを持っていたことが分かった。そこで、笠原氏はボックスタイプ、寺岡氏はファイルタイプを中心に、協力して開発を進めることになった。
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