毎年、多くのメーカーからさまざまな文具が生まれるが、ヒットするのは一握りだろう。何が成否を分けるのか。市場をどう読み、開発に生かしたのか。話題の文具を取材して、開発の舞台裏を探った。第1回はベンチャー企業のバタフライボードが開発した、携帯型ホワイトボードの事例を紹介する。
オフィスの会議室でミーティングを行うとき、ホワイトボードを使う例は少なくない。参加者のアイデアを素早く書きとめ、議論した内容をまとめるには、欠かせない道具といえる。しかし大きなホワイトボードは保管や設置に場所を取るし、数も限られるため、常備することは難しい。最近は社外のコワーキングスペースを活用する場合もある。そんな状況のなか、“持ち歩けるホワイトボード”として注目を集める商品がある。バタフライボード(横浜市)が開発した「バタフライボード」シリーズだ。
2015年にA4判の初期モデルを開発して以来、ユーザーの声を聞きながら改良し、17年にはA4判とA5判の「バタフライボード2」を、さらに19年3月にA3判の「バタフライボード Pro A3」を投入した。バタフライボードシリーズはアマゾンの販売数でも上位に来ることがあり、新製品のバタフライボード Pro A3も好調という。販売数量は明らかにしないが、市場の手ごたえをつかんでおり、これまでの累計では1万台以上が売れていることは確実だ。
バタフライシリーズは一般のホワイトボードと同様に、マーカーで書いたり消したりできる。最大の違いは携帯性だ。バタフライボード Pro A3の場合、外形は文字通りA3判と持ち運びできる大きさ。だが、特殊なマグネットを内蔵し、複数のバタフライボードの端面を連結すると大きく広げることができる。A3判のバタフライボード Pro A3を2枚つなげばA2判の大きさだが、バタフライボード Pro A3が135グラムなので、A2判にしても270グラム。1キログラムを超える製品が多いなかで圧倒的に軽い。
マグネットが付いているので金属製の壁に貼り付けられる他、机の上に並べたり、付属する専用台に載せたりするなど、場所や用途に応じて使い分けることが可能。0.5ミリと一般より細い専用のマーカーも開発し、利便性を高めた。一般のホワイトボード用のマーカーは太いためにバタフライボードでは書きにくい、といったユーザーの声を聞いたからだ。
「ビジネスパーソンだけではなく、教育現場での学習指導や病院などでの高齢者の方のコミュニケーションにも使える。会議でのアイデア出しや議論の深掘りにつなげ、イノベーションの実現に貢献できるようにしたい」(福島英彦社長)。自社のECサイトやアマゾンなどで販売しており、「バタフライボード Pro A3」は8100円(税込み)。
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