セブン-イレブン・ジャパンと日本電気(NEC)が共同で実験を始めた省人型店舗の実用化が視野に入った。同店はセルフレジや顔認証決済の導入で作業負荷を大幅低減し、従業員の実労働時間を4時間に抑えた。通常店舗の実に5分の1にまで削減に成功した計算だ。加えて採算も十分取れる算段が整った。

セブン-イレブン・ジャパンが2018年12月に、日本電気(NEC)と共同で開始した共同実験店
セブン-イレブン・ジャパンが2018年12月に、日本電気(NEC)と共同で開始した共同実験店

 東京・港区の三田国際ビルの20階に入居するセブン-イレブンの店舗には、NECのさまざまな技術が導入されている。顔認証を活用したセルフレジ、画像解析から来店客の性・年齢を判別して、店内のディスプレーに表示するコンテンツを出し分ける仕組みなどが導入されている。設置から約4カ月が経過したが、「既に採算は取れている。すべての仕組みが実用可能なレベルだと判断している」と、セブン-イレブン・ジャパンシステム本部店舗システム部の山田耕平統括マネジャーは明かす。

 店舗はNECのオフィス内にあり、技術検証を目的とした共同実験店という位置付け。そのため、一概には言えないが、さまざまな技術を盛り込む分、設置コストは通常の店舗よりも高い。その投資を回収するには、高い生産性が求められる。

従業員の実労働時間はわずか4時間

 共同実験店の生産性の高さを示すうえで分かりやすいのは、従業員の労働時間だろう。店舗はオフィス内のため、営業時間は午前7時半から午後6時の10時間半と短い。商品数は、400程度の小型店舗ではあるが、通常の店舗であれば、2人体制が想定される。となると、実労働時間は2人合わせて21時間となる。ところが、この省人型店舗は1人の従業員で済んでいる。しかも、「実労働時間は、4時間で済む設計になっている」(山田氏)。実に5分の1にまで短縮できる計算だ。実際、想定通りの実労働時間となっており、人件費の低下が高利益率につながる。

 従業員の業務負荷の低減につながっている技術が、社員証と顔認証を組み合わせた入店システムと、セルフレジだ。店舗の入店方法は2つ。1つはICカードリーダーに社員証をタッチする。もう1つは、レジに搭載されているカメラ機能を使って、自身の顔写真を撮影し、社員証とひも付ける方法。ひも付けが完了した後は、“顔パス”で入店できる。いずれにせよ、来店者は社員証で入店するため、万引き被害などの可能性はほぼゼロと言って差し支えないだろう。店内に従業員を置いて、抑止力を働かせる必要もない。

採算性を重視する現実的な観点から、来店客が商品バーコードを自ら読み込むセルフレジを採用した
採算性を重視する現実的な観点から、来店客が商品バーコードを自ら読み込むセルフレジを採用した

 支払い方法も同様の仕組みだ。レジは、来店客が自分で商品のバーコードを読み込ませるセルフレジとなっている。「Amazon Go」のような来店者の決済作業すら必要がない省人型店舗が注目を集めていることを鑑みると、やや前時代的な仕組みではある。「現状の売り上げ金額で採算が取れる設備を作るには、大量のカメラを設置するのは非現実的」(山田氏)と判断したのがその理由。セブン-イレブンのAmazon Go型店舗参入は、確かに耳目は集めるかもしれないが、現実的な観点から採算性のある店舗設計を目指した。

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