日経クロストレンドの独自調査「イノベーション300」は、決算データの他に、個人投資家へのアンケートで「イノベーティブだと思う企業」を選択してもらい、その結果を加味している。多くの投資家が選んだイノベーション企業4強は、トヨタ自動車、楽天、LINE、ソフトバンクグループだった。
日経クロストレンドの独自調査「イノベーション300」の特徴は、決算書や有価証券報告書のデータから成長性や収益性、研究開発・設備投資の積極性などを割り出すだけにとどまらず、個人投資家の知見も集約している点にある。
成長性や収益性、積極性などの指標が高い企業は、それらが低い企業よりもイノベーション企業である可能性は高い。しかしながら、イノベーティブとは言いづらい従来型ビジネスでまだ好業績を維持できている企業も存在する。本当の意味でイノベーション企業を割り出すには、財務データのみでは難しく、個別取材や質問票を送付・回収するといった調査をした方がよい。もっともそうして聞き出した手法や工夫は採点が難しく、ランキングにはそぐわなくなる。
そこで日経クロストレンドでは、個人投資家(経験者含む)を対象に「イノベーションを起こす(今までにない新しい市場、価値、商品・サービスを作り出す)力があると思う企業」を選んでもらうアンケート調査を実施した(複数選択可)。現状の事業拡大にとどまらず、新たに開発・開拓した事業領域で大きく成長する可能性を秘めているイノベーション企業は、多くの個人投資家が発掘に努めている銘柄でもあるからだ。
MaaSとキャッシュレス推進企業がイノベーティブ
個人投資家660人を5グループに分け、各100社リストからイノベーティブだと思う企業をマークしてもらったところ、最も多かったのはトヨタ自動車で、4割を超える投資家が選択した。トヨタの設備投資額は単年で1兆3000億円超(2018年3月期)、研究開発費も1兆円超(同)と他を圧倒している。ただしそれ以上に売上高が約30兆円と巨額なため、積極性の指標で伸びを欠いていた。
トヨタは目下、豊田章男社長自ら「100年に一度の大変革の時代」という危機感をにじませながら、モビリティー・カンパニーへの変革を宣言している。移動、物流など多目的に活用できる次世代電気自動車(EV)「e-Palette(イーパレット)」構想、MaaS事業推進のためにソフトバンクと提携・共同出資会社「MONET Technologies」を設立、米ウーバーへの出資、レクサスに月額定額制で乗ることが可能なサブスクリプション型サービス「KINTO」など、新事業・サービスのニュースが日々飛び交う。こうした積極姿勢を多くの個人投資家が評価している格好だ。
トヨタに次ぐ2位グループには、楽天、LINE、ソフトバンクグループが僅差で並んだ。この3社は、キャッシュレス決済でライバル関係にある。
楽天は、「楽天スーパーポイント」「楽天Edy」「楽天カード」「楽天ペイ」と多様なサービスを擁し、プロ野球、Jリーグの本拠地で完全キャッシュレス化を推進するなど、話題に事欠かない。LINEも、みずほフィナンシャルグループと共同で新たなネット銀行「LINE Bank」を設立する計画を発表済み。19年4月にはスターバックスコーヒーでLINEアプリから利用できるプリペイドカード「LINE スターバックス カード」の提供が始まった。ソフトバンクグループは、ソフトバンクとヤフーが共同出資するスマホ決済サービス「PayPay」に460億円を出資し、ユーザー獲得や導入店舗拡大の費用に充てる。金融×ITのFinTech領域で覇権を争う3社に対し、個人投資家の3人に1人以上がイノベーション企業と評価した。
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