日経クロストレンドが独自に行った調査「イノベーション300」で48位につけたパナソニック。創業100周年を迎え、イノベーションを生み出すために、他社との協業、サービス主体の事業開発に舵(かじ)を切る。既に成果と言うべきサービスも育ち始めた。
IoTやAI(人工知能)といった新しい技術が登場する中、複数の企業が技術を持ち寄り、製品やサービスを開発するオープンイノベーションの動きが活発だ。創業100周年を迎えたパナソニックも例外ではない。
パナソニックの津賀一宏社長は、2018年10月に開催した同社のイベント「クロスバリューイノベーションフォーラム2018」において、自社の事業を「くらしアップデート業」と定義した。国内外のパートナー企業と協力し、製品とサービスの両面で、利用者の生活に寄り添う事業を展開するというメッセージだ。そのためにも、製品を開発、製造して販売する「モノ」売りから、体験や利便性自体を提供する「コト」売りに転換し、次のイノベーションを生み出そうとしている。
その前線と言える部署が、17年に新設されたビジネスイノベーション本部だ。ビジネスイノベーション本部エッジコンピューティングPFプロジェクトCEOの宮崎秋弘氏は、新部署立ち上げの理由として2つを挙げた。
縦割り組織からの脱却を目指す
1つは、従来のカンパニー制ではできないプロジェクトを新たに立ち上げること。パナソニックは家電や空調、デバイス製品などを扱うアプライアンス社、照明や建設、介護システムなど、住宅やオフィスにまつわる商品を扱うライフソリューションズ社、車載向けシステムなどを扱うオートモーティブ社というように、取り扱う商品別にカンパニーに分かれている。
だが、「モノ売りからコト売りにシフトするには、サービスを中心とした事業を強化しなければならない。それはこれまでのパナソニックにはなかったもの。縦割りの組織を離れ、各カンパニーの領域をまたぐような発想で取り組むことが必要だった」(宮崎氏)。
ビジネスイノベーション本部は本社のイノベーション推進部門の配下で、事業テーマの探索から市場調査、サービス開発、事業化、運営まで全て一括して行う。R&Dで要素技術を開発し、各カンパニーに引き継いで事業化した従来のやり方とは一線を画している。「新規事業の立ち上げは、R&Dでは10年スパンで進めていた。それと比べると、スピード感は5~10倍速い」と宮崎氏は話す。
2つ目は、オープンイノベーション、社外との協業だ。パナソニックにはもともと、ある製品分野の技術を他の分野に応用して横展開する文化はあったが、これまではあくまでも社内に閉じていた。それを社外に広げる。さまざまな技術やノウハウを持つパートナー企業と協力し、1つのサービスを作り上げていく方針だ。
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