日経クロストレンドが独自に行った調査「イノベーション300」で、5位に入った楽天。売上高伸び率に基づく成長性や営業利益率に基づく収益性で高い数値を示したのに加え、個人投資家からの期待も大きかった。同社の今後の事業の鍵を握るのが、2019年10月に開始する5G時代を見据えた携帯電話事業だ。
「携帯キャリア事業の分野でも一番になる」と楽天の三木谷浩史社長は高い目標を掲げる。周知のとおり、同社は19年10月から移動体通信事業者(MNO)として携帯電話サービスを開始する。MNOとしては、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクに続く4社目の参入だ。
楽天は創業以来、様々なイノベーションを起こしてきた。その領域は幅広い。通販サイト「楽天市場」をはじめ、旅行サイト「楽天トラベル」、フリマアプリ「ラクマ」、電子書籍サービス「楽天kobo」、ネット銀行「楽天銀行」など、消費者の生活にかかわるサービスを着々と拡大してきた。「楽天Pay」「楽天Edy」で取り組むキャッシュレス、ドローンによる無人配送といった技術活用でも先頭を走る。
中でも、近年注力してきたのがモバイル通信サービスだ。2014年には、仮想移動体通信事業者(MVNO)として「楽天モバイル」の運営を開始。“格安SIM”サービスでシェア1位を占めるまでに成長した(MMD研究所調べ)。
今回のMNO参入の狙いを、同社は「楽天の各種サービスをつなぐこと」(広報)としている。これは既存の携帯電話事業者と逆のアプローチだ。例えば、NTTドコモは、自社ネットワークの上に、「dTV」(動画配信)、「dミュージック」(音楽配信)、「dショッピング」(通販)といったサービスを乗せ、「dアカウント」というIDサービスで連携させている。au、ソフトバンクも同様だ。一方の楽天は、楽天IDでつながったサービスが先にあり、これをモバイルネットワークで連携させる。MVNOとしての現行事業においても各種サービスのシナジー効果は大きく、同社の発表では、楽天モバイル契約者の楽天市場との併用率は90%、楽天カードとの併用率は74%に達するという。ネットワークが“楽天経済圏”のプラットフォームとして機能している。
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