日本を代表するイノベーション企業トップ3は、キーエンス、トヨタ自動車、LINE――。「日経クロストレンド」は、過去3年の決算データと個人投資家アンケートから、イノベーションによって業績を伸ばしている優れた企業「イノベーション300」を選出した。上位企業の特徴について解説する。
今までにない新しい市場、価値、商品・サービスを作り出す力を持つ「イノベーション企業」と聞いてどんな社名が思い浮かぶだろうか。グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル――。世界の株式市場で時価総額上位を占める「GAFA」を想起する人が多いはずだ。ただし、この4社から学ぶことは多いものの、スケールが大きすぎて参考にしづらい面もある。
もっと身近な国内企業でイノベーション力に優れた企業はどこか? 日経クロストレンドは、時価総額上位300社を対象に財務データと個人投資家アンケートから、イノベーション企業300社ランキングを算出した。
従業員のモチベーションを左右する平均給与の高さと、意思決定スピードに影響する従業員平均年齢の若さから「組織活力」を算出した他、売り上げ規模の拡大を示す「成長力」、利益率の高さを示す「収益性」、研究開発および設備投資の重視度を示す「積極性」、研究開発および設備投資の利益への貢献を示す「効率性」の計5つをイノベーション力を測る指標とし、有価証券報告書などの財務データから算出。そこに個人投資家アンケートの結果を加味し、イノベーションスコアを割り出した。
300社の頂点に立ったのは、FAセンサーなど検出・計測制御機器大手のキーエンス。次いでトヨタ自動車、LINE、任天堂、楽天が入った。
キーエンスは、業績を反映する給与体系を採用し、2018年3月期の年間平均給与は2000万円を超えた。GAFAに負けない給与水準と言える。一方、同社の従業員平均年齢は35.9歳と若さを保っていて、軒並み40代半ばに差し掛かっている国内大手有名企業とは対照的だ。平均年齢が若いベンチャー企業の給与水準は低くなりがちで、反対に給与が高い企業は平均年齢が高いが故であったりするため、若さと給与の高さは両立しづらい。そこを両立させている同社は、組織活力と収益性の2項目で1位になり、成長性も20位以内に入ったことで、スコアを上げた。
2位のトヨタ自動車は、時価総額首位の大企業ながら平均年齢は30代と若さを保ち、平均年間給与も800万円超とメーカーとしては高いことから組織活力で上位に入った。他項目でも“取りこぼし”がなく、さらに「イノベーティブだと思う企業」を選んでもらう個人投資家アンケートで圧倒的な支持を得たことで2位に食い込んだ。個人投資家アンケートについては回を改めてその特徴を分析したい。3位のLINEは、2期前の1407億円から2018年12月期は2071億円にまで売上高を伸ばし、成長性で上位に入った。投資家からの評価も高かった。
ではランキング1位のキーエンスについて見ていこう。同社は5年連続で売上高営業利益率が50%を超え、売上総利益(粗利)が80%を超える高収益体質企業。過去25年間の売上高成長率は平均10%超、新製品の70%に「世界初」「業界初」の冠が付く、付加価値の高い製品づくりで好業績を生み出している。
そんなキーエンスのイノベーション力の源泉はどこにあるのか? 同社の強さについては、精鋭の営業部隊の営業力・提案力、「世界初」を送り出す製品力、自前の工場を持たず製造を委託するファブレス体制、代理店に頼らない直販体制ならではの全品当日出荷、などがよく挙げられる。
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