企業公式Twitterアカウントの「中の人」が運用の秘訣を語る本連載。タニタの第1回では、公式Twitter運用の原点になったニコニコ動画担当の経験、第2回は新たな働き方として個人事業主を選んだ経緯、第3回は盟友シャープ公式との傑作コラボ企画を取り上げた。第4回は、名物企画「タニタ式どうでしょう」に焦点を当てる。

2020年4月1日から企業ロゴ刷新に伴い、Twitterアイコンも変更。どこが変わったか分かるかな?
2020年4月1日から企業ロゴ刷新に伴い、Twitterアイコンも変更。どこが変わったか分かるかな?
今回のポイント
1.単独行動より仲間と協同することで愉快な企画に
2.行きあたりばったりのゆるさが面白ハプニングをもたらす
3.好きなことの発信から、新たな出会いや予想外の展開が生まれる

(編集部)「中の人」連載は、最終6社目タニタさんの第4回(最終回)を残して中断していました。第4回でTwitter旅企画「タニタ式どうでしょう」を取り上げる予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大局面で、県をまたぐ往来、不要不急の外出に自粛が呼びかけられている折、公開を“自粛”していた次第です。緊急事態宣言が解除された今、早期の終息と、各自治体・観光地に来訪者が戻ることを願って、本連載も再開します。

さて、今回はタニタ公式Twitterの名物企画になっている「タニタ式どうでしょう」についてお伺いしたいと思います。ふと流れてきたツイートから、人気アカウント同士で旅に出ているのを知って、「仲いいなあ(笑)」「旅先でもお仕事(ツイート)はしっかりされているんだなあ」と思いながら見ていましたが、そもそもこの企画はどんな趣旨で始まったのでしょう?

タニタのグループ会社にタニタヘルスリンク(東京・文京)という健康サービス事業を展開している会社がありまして、主に健康経営を目指す企業や健康長寿を目指す自治体に向けて「タニタ健康プログラム」というサービスを提供しています。もともとはタニタ社内で従業員の健康のために実施していた取り組みでしたが、成果が出たことで、BtoB向けのプログラム、医療費適正化パッケージとして2014年から提供を始めています。タニタの計測機器を設置していただいて、利用者の計測データから健康カウンセリングをするなど、利用者の健康づくりをトータルサポートしています。

 その一環で実施している、地元食材を使ったヘルシーメニューを提供したり観光地をウオーキングしたりする「ヘルスツーリズム」というプログラムがあるのですが、当時ちょうどそのプログラムができた四万温泉(群馬県中之条町)に参加したのがきっかけでした。

 私1人で行ってもよかったのですが、「それで面白いかな?」と考えたときに人気アカウントの面々が思い浮かびまして、「各社『中の人』も日ごろお疲れでしょうから、慰労の意味を込めて、ちょっとお声がけしてみようかな」と(笑)。第1弾は17年2月13~14日というバレンタインデーがかぶる日程でしたが、「まったく問題ない」とキングジムさん、セガさん、シャープさんから快諾をいただいて、お出かけしてきました。

「水曜どうでしょう」の本拠地・北海道に乗り込んだタニタ式ご一行様
「水曜どうでしょう」の本拠地・北海道に乗り込んだタニタ式ご一行様

「タニタ式どうでしょう」という名称はやはりあの番組から?

これはタニタ側で命名したものではなくて、シャープさんがたまたまツイートした言葉なんです。訪問先やルート、宿泊先はタニタヘルスリンクがコンダクターとなって決めていますが、具体的な行程は知らされていないので、「4人で行くあても分からない旅に出るって(北海道テレビ制作の人気バラエティー番組)『水曜どうでしょう』っぽいよね」ということから、そのまま企画名になりました。

 観光案内所で職員の方からサインを求められて、とまどいながら書いてきたこともありましたが、後日、フォロワーの方が「行ってきました」と案内所に掲示されている我々のサインを写真に撮ってツイートしていただいて、集客にも貢献できたかなと手応えを感じています。四万温泉に続いて、18年3月に北茨城市(茨城県)、18年12月には「水曜どうでしょう」の本拠地・北海道、19年12月には鳥取県と、4回実施してきました。
※新型コロナ禍でこの4エリアをはじめ多くの自治体、観光地でご苦労があったことと存じます。一日も早い終息と、観光業の復活、「タニタ式どうでしょう」の第5弾が企画できることを願っています。

毎回何かハプニングが起こる面白さがありますね。

ダムや風光明媚(めいび)な場所を訪れ、健康計測機器が置かれている施設を見学し、ヘルシーメニューを味わう、といった旅の行程を自由にツイートするのですが、各社それぞれ自社商品を持参してさりげなくアピールもされていました。シャープさんは「超音波ウォッシャー」を持参して、「食べこぼしのシミがあったら落としますよ」という具合。

 セガさんは夜みんなで遊べるようにと、1984年発売の伝説の室内用ピッチングマシン「ロボピッチャ」を持参されたのですが、なんと電池を忘れて動かない(笑)(※「ぷよぷよテトリス」と「バーチャファイター」で遊びました)。また第3弾の北海道編では、セガさんがたまたま十徳ナイフのキーホルダーを持っていたために羽田空港の手荷物検査で引っかかり、それがYahoo!ニュースのトピックスに載るという“事件”がありました。狙ってできることではありません。

「タニタ式どうでしょう」は、「中の人」が参加するツアーの原型になったのではないでしょうか。西武鉄道さんも19年10月に秩父応援ツアーを開催していますね。

秩父応援ツアーは私も参加しました。名産のそばを食べ、長瀞の岩畳を見物し、人気のウイスキー「イチローズモルト」をお土産に購入し……と、秩父の魅力を満喫できた、いい旅でした。

 タニタとしても、移動を伴う企画は歩数計をご紹介、ご提案できる機会になります。秩父ツアーには、名だたる刀剣が戦士へと姿を変えた「刀剣男士」を収集する刀剣育成シミュレーションゲーム『刀剣乱舞-ONLINEー』とコラボしたタニタの歩数計の中から、秩父神社とゆかりのある「謙信景光」モデルを持参しました。

『刀剣乱舞-ONLINEー』コラボ歩数計に7種類の新デザインを追加、全80種類を再版(予約受け付け終了)
『刀剣乱舞-ONLINEー』コラボ歩数計に7種類の新デザインを追加、全80種類を再版(予約受け付け終了)

タニタさんは「たまたま」「偶然」を引き寄せますよね。

自分の好きなこと、興味あることをツイートしているからだと思います。例えば私、邦楽ロックが大好きで、ストレイテナーはライブにも行くくらいお気に入りなのですが、そういった趣味についてよくツイートしています。そうしたら、バンドメンバーの方とTwitterで交流する機会ができて、その後コミック『シャープさんとタニタくん』第2弾の話が持ち上がったときに、漫画のテーマソングでコラボできないかと事務所にご相談したら、ご了承いただいてタイアップが実現するという夢のようなことが起きました。

 「刀剣乱舞」もゲームの進捗についてツイートしていて、「コラボ商品を作ってほしい」というリプライが寄せられたことから、コラボ商品化が進みました。「タニタ式どうでしょう」の北海道編では、本家「水曜どうでしょう」のディレクターさんにお会いすることもできました。

 「何がウケるか?」と考え込んでいても何も始まりません。本当に好きで熱く語れるモノ・コトをツイートすることで、それを共有できるフォロワーさんとの距離感が一気に縮まります。好きなこと、いいなと思うもの、気づいたことをどんどん発信していくと、予想外の反響や転がり方をして返ってくることがあります。それがTwitterの面白いところですね。

 2020年でタニタ公式Twitterの運営10年目に入りました。Twitterから新しいつながりや素敵な出会いが生まれることを期待しながら、これからももっともっと発信を続けていきます。


「中の人」連載が書籍になりました
2020年6月15日発売
自由すぎる公式SNS「中の人」が明かす 企業ファンのつくり方

 セガ、東急ハンズ、キングジム、井村屋、タカラトミー、タニタ……。「日経クロストレンド」で2019年6月からスタートした当連載「『中の人』が語る 人気SNSのつくり方」が書籍になりました。
 各社のTwitterでの取り組みに加え、佐藤尚之(さとなお)氏と「中の人」6人との座談会の様子もまとめています。さとなお氏は、熱狂的に支持してくれる「ファン」との関係性をベースに中長期的な売り上げや価値の向上を目指す「ファンベース」という考え方を提唱。これからの時代になぜファンが重要なのか、企業が愛されるために何をすべきか、ファンベースの視点で「中の人」に迫ります。
 「中の人」6人の取り組みは、企業内の「個」の力がいかんなく発揮された好例でもあります。6者6様の試行錯誤からは、企業の中で自分の力をどう発揮すればいいのかと悩んでいる人の参考にもなるはずです。
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