企業公式Twitterアカウントの「中の人」が運用の秘訣を語る本連載。セガグループの4回目は、企業公式アカウントが果たす役割や、その変化について取り上げる。セガTwitterには、会長や社長が登場することもあれば、中の人の個人的なつぶやきもある。どんな考えに基づいて運用しているのか?
2.公式アカウントに経営層が登場して素の表情を見せることで、企業への興味関心や親近感を醸成
3.中の人の個性は大事。人となりがうかがえる投稿でフォロワーとの関係を構築
350を超える公式アカウントを運営するセガグループにあって、セガ公式Twitterはいわば「公式の中の公式」、ですよね。そんな公式の「中の人」だからこそ改めてお聞きしたいのですが、公式アカウントの役割、企業にとっての公式アカウントの位置づけ、それがどう変化しているのか、あるいは変わらないのか。漠然とした問いかけですが……。
企業アカウントは今、第3世代に入ってきているかなと個人的に思っていまして。
企業アカウント3.0ですか? すると、1.0、2.0は何だろう? ざっくり解説をお願いします。
第1世代は、ちょうど10年前のTwitter黎明(れいめい)期です。2009年くらいから企業アカウントが開設されて、企業アカウントは定型文発信やお堅いプレスリリースの発信をするものと思われていました。
その時期に現れたのがカトキチさんでしたね。「おはようございますうどん」とか「おそれいりこだし」のように商品名に引っ掛けたダジャレを、企業ブランドを冠したアカウントが言っちゃうんだ!という新鮮な驚きがあって、それだけでドッカン!とニュースになる勢いがありました。“軟式”という日本独特のテイストが確立された時期です。もっとも、Twitter人口はまださほど多くはなかったので、知る人ぞ知る世界でもありました。
2011年の震災をきっかけにTwitter人口が増え、それに触発されて続々と企業アカウントの開設が続いたのが第2世代。上層部や周囲のSNSに対する理解がまだ進んでいない環境下で、企業の堅いイメージを押し付けるのではなく、イチ社員としてお客さんと対話し、ネット文脈を理解した形の発信や、他社を巻き込んだTwitter企画など、斬新なチャレンジをする企業アカウントが現れました。「中の人」が炎上対策や効果測定、そして「出る杭は打たれる」という社内外の圧力に堪えながら孤軍奮闘した時代です。
「センスのよい投稿」や「中で働く人の顔がうかがえるアカウント」が注目され、それを意識したアカウントも次々と登場しました。が、意識するあまり、個人が暴走してパブリックではない投稿になってしまったり、目立つことが最優先でプチ炎上するケースも一部あったりして、企業ブランドとアカウントの乖離(かいり)が見られた時期でもありました。
今は、その乖離が修正されてきた段階かなと思います。それが第3世代。SNS担当者という仕事は10年以上前にはなかった職種ですが、7~10年という長期で、誠意をもってお客さまと交流しコツコツと土壌を耕してきた第1世代・第2世代の企業アカウントが、ここにきてやっと評価されるようになったことが大きいと思います。会社の上層部も含めてSNSを使いこなすようになり、担当者も若手のデジタルネイティブ世代が現れました。企業アカウントがちょっと面白いことをツイートするのも当たり前になった今、何を目的に、どう長期的に運営していくのか、企業ブランドと公式アカウントが“目線”を合わせて発信していく。それが「中の人」に求められているように思います。
確かに「バズってなんぼ」とばかりに、企業のブランドイメージと合わない暴走ツイートが持ち味のアカウントが面白がられる時代は過ぎた感があります。
目線がぶれないのであれば、よいと思いますけど(笑)。
例えばタニタさん、キングジムさん、井村屋さんもですが、社長が企業アカウントにたびたび登場します。セガもトップが時々登場します。企業広報的なオフィシャル感あふれる社長インタビューとは違って、もっと素に近い表情が垣間見えるもので、フォロワーにも興味や親近感を持っていただけています。これは上層部にまずSNSへの理解があって、SNS担当者とも信頼関係の下で意思疎通ができていないと、成立しないと思うんですね。
なるほど。企業アカウントはちょっと変わった人(笑)や若手に丸投げ・放任すればいいものではなくて、経営直下の重要なメディアであり、ポジションであるべきなのでしょうね。
結局SNSで長期的にコミュニケーションを重ねていくと、嘘やごまかしはかなりバレやすくなるので、圧倒的なリアル感が受け入れられやすい。社長がSNSへ登場すると楽しそうな表情や社風が伝わりやすく、また「新しいツールに柔軟である」「時代の変化にいち早く対応できる」といった企業カラーが透けて見えます。経営層もSNS活用の理解が進み、自ら登場することがより効果的だと感じて、発信に積極的になっていると思います。
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