企業公式Twitterアカウントの「中の人」が運用の秘訣を語る本連載。井村屋の第1回では、2019年のエイプリルフール企画に“参戦”しなかた理由について語ってもらった。第2回は、アカウント開設のきっかけや、フォロワー数を1万人増やした“伝説”のツイートなどについて振り返ってもらう。

一般消費者向けに直販するECサイトを担当していたことが、SNS開設のきっかけに
一般消費者向けに直販するECサイトを担当していたことが、SNS開設のきっかけに

前回はいきなりエイプリルフール“不参加”のお話からスタートしましたが、今回はアカウント開設のきっかけからお聞きしたいと思います。

はい、公式Twitterアカウントの開設は2012年の7月なので丸7年たちます。ロイヤルホストさんやゼビオさん、そしてNHK広報局といった企業アカウントがトップランナーとして話題になっていました。私が「SNSをやりましょう」と提案して初代担当に就いたのが始まりです。運用部署は商品営業企画部(当時、業務用営業部)で、私はECサイト「井村屋ウェブショップ」の開設、運営を担当していました。

自ら手を挙げてSNS開設を提案し、初代「中の人」に
自ら手を挙げてSNS開設を提案し、初代「中の人」に

 開設の目的は、井村屋の社名をもっと広く知っていただくこと。「あずきバー」は商品認知度が高く、そこから井村屋という社名もひもづいて想起されるのですが、反対に井村屋の社名からは商品名がなかなか思い浮かばなかったりします。本社が三重県ということもあるかもしれませんが、東京ではまだまだ認知度不足を感じます。

 当社の営業部員が日常業務で接するのは卸事業者が多いため、取引先は井村屋の名前を当然知っています。その環境で仕事をしていると、一般消費者の認知度に対する意識が薄くなりがちです。私はECで消費者向けの販売を担当していましたから、消費者の認知度に敏感だったことが、アカウント開設のきっかけになりました。

すると販促よりブランディング目的ですね。

はい、Twitterは「買って」と言ってそう簡単に買ってくれるメディアではないと思います。目指しているのは、「井村屋さん」とフォロワーの方から話しかけられるような、ご近所さん感覚の存在感、距離感です。そんなコミュニケーションを続ける中で時折、自社商品についてもご紹介、ご案内していく。一方的な宣伝ではなく、「試食めっちゃうまかった」という感じですね。前回お話しした、新元号発表時に投稿したダジャレ「令和といえば冷和(冷凍和菓子)」も、井村屋には冷凍和菓子という商品カテゴリーもあることが頭の片隅に残ってくれたらいいな、という考えからツイートしたものです。

現在フォロワー数は15万人超と順調に増えていますね。

開設当初は、コミュニケーション目的のアカウントという運用方針は決めたものの、手探り状態でした。無料でできるABテストを毎日やっているんだと割り切って、どんな投稿が良い反応を得られるか、試行錯誤を続けました。まずフォロワー数1000人を目指し、2カ月で500人になったのですが、500人を超えたあたりから増加ペースが鈍ってきました。

 そんな最初の壁にぶつかっていた時、タイムラインを見ていたら赤城乳業さんの「ガリガリ君リッチ コーンポタージュ」が話題になっていて、「温めたらコーンポタージュスープになるか確かめてみた」という実験記事がバズっていたんですね。そこで、あずきバーも温めるとぜんざいになることを豆知識としてお伝えしようと思いました。ただ「なるよ」と言うだけでは味気ないので、こんなツイートをしました(図右)。

 ちなみに「ジョブチェンジ」は、「ファイナルファンタジー」シリーズに出てくるキャラクターの役割変更システムのことです。

この一連のツイートで1万人のフォロワーを獲得した
この一連のツイートで1万人のフォロワーを獲得した

 これが一晩でリツイート数が5000件を超えました。フォロワー数500人の10倍ですから驚きです。そこで翌日、実際に「あずきバーをレンジでチンしてみた」と実演して、ぜんざいになる過程をレポートしました。この一連のツイートで、500人だったフォロワーが1万人を超えました。

 もともと、あずきバーという商品自体が、ぜんざいをそのまま凍らせてアイスにするというコンセプトなんです。社内の人間にとっては常識でも、世間的には知られていない、サプライズだったりすることがあります。それを貴重な投稿ネタとして、タイミングよく投入できたのが功を奏した格好です。


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