京都北部に位置する宮津市と京丹後市、伊根町、与謝野町の2市2町からなる丹後地域は、2017年から地域ブランディングに取り組んでいる。高級絹織物「丹後ちりめん」をはじめ、織物の技術や文化、歴史など、地域の魅力を国内外に発信していくため、まずインナーブランディングに力を入れる。
それらの総称として掲げたブランド名が「TANGO OPEN(タンゴオープン)」だ。ブランディングは丹後地域の2市2町に加え、丹後織物工業組合や京都府などが一体となって取り組んでおり、統括する組織として「丹後ちりめん創業300年事業実行委員会(以下、300年事業実行委員会)」を立ち上げた。
ターゲットイヤーは20年。丹後地域にちりめんの技術が伝わってから300年という節目の年であり、東京オリンピック・パラリンピックの開催で日本が注目されるタイミングに合わせた。国内外への情報発信に加え、織物事業者の新たな販路開拓も目指している。出荷額の目標は17年から20年までの4年間で4億円。18年には、織物事業者6社がTANGO OPENとしてフランス・パリで開催されたインテリアと雑貨の国際見本市「メゾン・エ・オブジェ」に出展。19年3月には、ユナイテッドアローズの全ブランド向けに展示会を開催した。
丹後ちりめんだけじゃない
丹後地域は、約1300年前から続く絹織物の産地だ。1720年に京都・西陣から「ちりめん」の技術が伝わって以来、表面に凹凸状のシボがある白生地「丹後ちりめん」の産地として栄え、友禅染などの高級婦人呉服の素材として日本の和装文化を支えてきた。現在も国内で販売されている着物生地の約60%は、丹後ちりめんだという。だが、着物の需要が減り、それに伴い丹後ちりめんの生産量は激減している。ピークは1973年で約920万反生産していたが、2018年は約3%の28万反まで落ち込んでいる。
そうした状況から丹後地域では、これまで丹後ちりめんで培ってきた伝統技術を背景に、新しいデザインや技術を取り入れた洋装生地やインテリア用生地の開発に活路を見いだそうとする事業者が増えてきた。10年以上前からフランスやベルギーなどで開催される展示会に出展し、オリジナルのテキスタイルが海外の一流ブランドのコレクションに採用された例もある。
しかし、国内の服飾業界において丹後の織物といえば、高級婦人呉服素材という印象が強く、その先入観からか産地を訪ねてくるアパレルブランドや小売店などのバイヤーは少なかった。要するに、丹後地域では世界で通用する多種多様な織物が生産されているにもかかわらず、ほとんど知られていない状況が続いていたのだ。下請けやOEMの仕事が中心という背景もあるが、丹後地域の織物技術を総称する名称がなく、アピールしにくい状況だったことも影響していたようだ。300年事業実行委員会事務局の日下部暁主任は「洋装やインテリアなどで使用するテキスタイルなどを『丹後ちりめん』と呼ぶことには違和感がある。産業振興のためにも何か名称のようなものが必要だと感じていた」と話す。
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