資金力のない地方企業であっても、人々に支持されるブランドや商品はつくれる。実際、日本の地方には魅力的な資産──伝統工芸や観光資源など──がある。その資産を発掘し、磨き、発信できるかどうかが勝負の分かれ目だ。本特集では、生き残りをかけて知恵を絞り、行動に出たローカルブランドを追う。
日吉屋は京都で150年続く和傘店で、代表の西堀耕太郎氏は5代目当主の和傘職人だ。日吉屋は西堀氏の妻の実家だったが、結婚した1997年当時の年商はわずか167万円。先代は廃業を決めていた。そんな日吉屋が復活した理由は、自らの技術力を別の有望市場で生かすことに成功したからだ。
日吉屋の西堀氏は、「こんなに美しく、歴史ある事業をやめるのはもったいない。自分にできることはないか」と考えたという。自分自身でも傘作りの職人として修業を始め、需要を掘り起こそうと日吉屋のホームページを制作した。これが功を奏し、注文や来店が増え、年商は1000万円まで成長。2004年にそれまで勤めていた公務員を退職し、5代目当主に就任した。
和傘の技術や美しさを日常に生かす
ホームページで売り上げが増えたといっても、潜在需要をわずかに掘り起こしているだけで、一定の需要に達すると頭打ちになった。「和傘の良さや美しさを受け継いだ、日常生活の中で普遍的に使われるものを作りたい」(西堀氏)。そうした思いを形にしたのが、06年に発売した「古都里-KOTORI-」をはじめとする照明器具だ。
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