スマホで家族や友人と連絡を取るために頻繁に使われているツールといえば「LINE」だ。顧客接点の手段としてLINEアカウントを持つ企業も多い。その中でも自動応答のチャットボットを運用し、ファン獲得やサービス品質の向上に役立てている企業の代表がローソンとヤマト運輸だ。2社の成功の秘訣は何か。

ローソンの「ローソンクルー♪あきこちゃん」。リバーシ、しりとり、占いなど多彩なゲームや情報コンテンツを用意している
ローソンの「ローソンクルー♪あきこちゃん」。リバーシ、しりとり、占いなど多彩なゲームや情報コンテンツを用意している

 日々10万人もの訪問者を集める人気のチャットボットがある。ローソンが運営する「ローソンクルー♪あきこちゃん」だ。フォロワー数は2500万以上。そのうち1000万以上がブロックされていない「生きている」アカウントで、月に2回プッシュメッセージを送信するときには、アクセス数が300~500万件に跳ね上がる。

 「会話ができて、ゲームや占いもできる。だからこそ1日に10万人が見に来てくれる」と、ローソンマーケティング本部プロモーション部シニアマネジャーの白井明子氏は話す。2010年に「Twitter」のアカウントとして登場したあきこちゃんは、12年にはLINE公式アカウントとしてもお目見えした。

 ローソンがあきこちゃんを設置している目的は、顧客の接点となるLINEアカウントを定期的に利用してもらい、ファンを獲得すること。さらにアカウントを通したクーポン配信や新製品情報の提供に実効力を持たせることだ。そのために単なる対話にとどまらず、さまざまな機能を追加している。

強力な将棋ソフト「Ponanza」実装

 16年には日本マイクロソフトの対話AI(人工知能)「りんな」の技術を実装し、自由な会話ができるようになった。当時から「しりとり」などの、利用者と簡単なゲームができる仕組みは備えていたが、その後機能を拡張し、今では天気予報、占い、糖質に配慮したローソンの食品をお薦めする機能などを楽しめる。

 「勝てない」「強すぎる」。そんな評判がSNS上で話題になったのは、あきこちゃんが18年2月に将棋の機能を実装したときだ。プロ棋士の名人にも勝利した将棋ソフト「Ponanza」の機能をLINEアカウントに組み込んだもの。ローソンが朝日杯将棋オープン戦で棋士に昼食を提供することになったことがきっかけで搭載した。

「あきこと将棋」を選ぶと、高い実力を持つ将棋ソフト「Ponanza」と対戦できる
「あきこと将棋」を選ぶと、高い実力を持つ将棋ソフト「Ponanza」と対戦できる

 日々ユーザーが楽しめるコンテンツを提供することで、「ブロック率を抑えられる」(白井氏)。ブロック率とは、ユーザーが一度企業アカウントを登録した後にメッセージを受け取らない設定に切り替えてしまう比率のことだ。このブロック率の低減こそが、あきこちゃんの目的を達成する上での重要な指標となっている。

 「登録したら無料でスタンプをお渡しします」と促すLINEの企業アカウントは多いが、スタンプをもらったら即座にブロック設定をする現金なユーザーもいる。それでは企業と消費者をつなぐ接点にならない。あきこちゃんは「ゲームもできるし、話せるし、クーポンがもらえるので、そのまま置いておこうか、となる」(白井氏)。他の企業の公式アカウント平均と比べて1割以上ブロック率が低い状態を維持しているという。

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