「類友」から情報を得るように

 広告業界に長年携わってきた佐藤氏だが、近年は新規顧客を獲得するための広告が本当に効かなくなったと話す。現代の人々はSNS等の台頭で、かつてない量の情報に囲まれているからだ。佐藤氏は、現代の広告を「砂の一粒」と表現する。

「これだけ情報量が多いと、広告の露出を増やしても砂の一粒になるだけで、基本的に届かないし見てくれない。たまたま見てくれたとしても覚えてもらえず流れてしまう。広告に効果が無いわけではないが、昔と比べて打率は非常に低くなった」(佐藤氏)。

 では、人々はどんな情報なら信頼するのか。佐藤氏は「価値観の近い人の選択に頼る」と分析する。海外のPR会社が日本で調査した結果によると、人々が情報源として最も信頼するのは「家族や友人」だという。つまり生活レベルや趣味が近い「価値観が近い人」が愛用する製品やサービスに人々は影響を受けやすいと佐藤氏は述べる。

人々が最も信頼するのは、インフルエンサーなどの影響力がある人ではなく家族や友人など自分と価値観が近い人だという
人々が最も信頼するのは、インフルエンサーなどの影響力がある人ではなく家族や友人など自分と価値観が近い人だという

 このように人々が同じ属性や価値観を持つ人とつながろうとする傾向を「ホモフィリー」と呼び、「類は友を呼ぶ」「似た者同士」ともいわれる。ファンを獲得できていれば、その人たちが自分に近い家族や友人に熱意を持って広めてくれるというわけだ。「ファンこそが新規顧客を増やしてくれる」(佐藤氏)。

悪い部分を直すより、良い部分を伸ばす

 続いて、ファンベースを進める上でのポイントについて佐藤氏が紹介した。重要なのは、悪いところを直すのではなく、良いところを伸ばすこと。「従来のマーケティングは、悪いところを直していかに新規の顧客にアプローチするかがポイントだった。ファンベースでは、今の製品を良いと思って買ってくれている人に、より好きになってもらうための施策を打っていく」(佐藤氏)。買っていない人にフォーカスするのではなく、「今大好きだ」と言ってくれる人が好きな部分を分析して、その部分を伸ばすことが大切だと話す。

 ファンベースを進める上では、商品の機能価値を伸ばすのではなく「情緒価値を伸ばすことが大切」と佐藤氏は語る。佐藤氏が例にあげたのがドミノピザだ。当時「30分で届くピザ」という触れ込みは圧倒的なUSP(Unique Selling Proposition、独自の売り)だったが、すぐに他社が追随して当たり前のものになった。新規顧客が増えるときに情緒面でもファンにしておかないと、先行商品を研究して付加価値をつけた後発商品に顧客を取られてしまうと佐藤氏。「機能価値はコピーできるけど、情緒価値はコピーできない。ファンになってもらうためには、共感や愛着、信頼を得られるようにアプローチする必要がある」(佐藤氏)。

機能価値を伸ばすよりも「共感」や「愛着」「信頼」をテーマにアプローチすることで、顧客がファンになってくれる
機能価値を伸ばすよりも「共感」や「愛着」「信頼」をテーマにアプローチすることで、顧客がファンになってくれる