月額6800円で高級バッグを借り放題、採算が合う仕組みとは?

 ラクサスは、月額6800円(税別)でエルメス、ヴィトン、シャネルなどの高額ブランドバッグを借り放題できるサービスで、急成長を遂げているサブスクサービスだ。サービス開始から27カ月でシェア金額累計は100億円を突破。4倍の成長率で推移し、56カ月が経過した現在は、累計420億円を達成している。

ラクサス・テクノロジーズ(広島)社長の児玉昇司氏
ラクサス・テクノロジーズ(広島)社長の児玉昇司氏

 ユーザーは平均30万円ほどのバッグを利用しているが、高級バッグを手配したり在庫管理をするのは、コストがかかるもの。ラクサスでは、顧客同士がバッグを「シェア」することでコストを大幅に抑えているという。「ユーザーが使用していない、タンスの肥やしになっているバッグを提供してもらい、それをシェアする仕組みを作った。自社で在庫を用意するというよりも、ユーザーが持参したモノを有効活用しているのでコストを削減できている」(ラクサス・テクノロジーズ社長の児玉昇司氏)。

新規顧客の獲得にも役立つ

 「earth music&ecology(アースミュージック&エコロジー)」を展開しているストライプインターナショナル(岡山市)も、「メチャカリ」という月額5800円(税別)で服を借り放題できるサービスを開始している。アプリで提供しており、累計ダウンロード数は100万を突破、有料会員は1万3000人ほどだ。

 商品を売る小売業のストライプインターナショナルが洋服のレンタル業に進出したのには、新規顧客獲得が狙い。サービスを開始した2015年当時、アパレル業界は市場が縮んでおり、バブル期に13兆円だった市場が9兆円くらいまでシュリンク。新しい顧客を取り込むために始めたのが「メチャカリ」だった。

 ストライプインターナショナル メチャカリ部長の澤田昌紀氏は、「最初は『当店のファンがたったの5800円で洋服が着放題になったら喜ぶのでは』と思っていたが、実際に運用してみると、普段お店で服を購入している既存顧客ではなく『店に行きたくないし、服のことなんか考えたくない』という人たちが多く利用していることがわかった」と語る。現在の顧客の70%は新規顧客で、スタイリングの機能なども実装されている。「常に新品のきれいな、トレンド感がある洋服をレンタルできることに価値を見いだして受け入れられているサービスだと思う」(澤田氏)。

ストライプインターナショナル メチャカリ部長の澤田昌紀氏
ストライプインターナショナル メチャカリ部長の澤田昌紀氏

 新品の商品のみを貸し出すモデルだとコストがかさむ懸念があるが、メチャカリは中古品の販売をしているZOZOUSEDと提携することでコスト削減に成功した。

 「高級バッグと違い、洋服は消耗品なので誰かが着た服を着るのはやっぱり嫌なもの。『サブスクだけど中古でしょ?』と言われたくなかったから、提供する商品は新品にした。ユーザーから返却された商品はZOZOUSEDに送り、商品データを連携して販売している」(澤田氏)。

メチャカリのビジネスモデル
メチャカリのビジネスモデル

「問題顧客」にやめてもらえば割安にできる

 顧客にとって使いやすいサービスを提供するためには、価格設定も重要だ。ラクサスを提供する児玉氏は、女性が継続して払っている携帯代に注目し、それを超えることはできないと考え、6800円に設定したという。とはいえ、6800円まで価格を抑えるには苦労があったそうだ。

 「事業計画を立てた当初、通販事業の経験をもとに試算すると月額2万9800円でないと採算が合わなかった。実は2万9800円の中に、バッグを壊す人や部品をとってしまう人など、一定数の問題顧客がいるという前提で試算していた。問題顧客を2%くらいと試算し、その人たちにサービス利用をやめてもらえばうまくいくことが計算上分かった」(児玉氏)。

 サブスクは基本的にお客と継続的な関係を結ぶものなので、無理な要望をしてくる顧客に対応をしようとするとコストに全部跳ね返ってきてしまう。「別のサービスをお使いください」と言うことも重要で、お客と対等な関係を結んでいないとサスティナブルに続けていけないのだ。

 良いサービス内容・価格だとしても、顧客が継続利用をしてくれなければ意味がない。獲得した顧客がずっと利用してくれるよう、パーソナライズのヘアケア商品を扱う深山氏は、コールセンターの教育に力を入れ、解約率を低下させている。

 「サービスの解約はコールセンターで受け付けているが、1回解約すると言ったとしても、新しい処方の提案をすると、納得感を持って継続利用してもらえるケースが多い。解約の電話をしてきた人の20%がほかの処方へ変更をしている。また、季節の変わり目などに、『こういう処方に変えませんか?』というメッセージを送って提案することで、継続率が伸びることがわかった。こちらからお客様の髪の状態を予測して提案したほうがよいと思っており、システム開発に力を入れたい」(深山氏)。

 ローンチした2014年に入会してくれたユーザーの半数が今でも継続利用してくれているというラクサスの児玉氏は、「『この期間を超えれば継続利用してくれる』というポイントを解決すればよい」とアドバイスする。

ラクサスを9カ月以上継続利用しているユーザーは98%を占めている
ラクサスを9カ月以上継続利用しているユーザーは98%を占めている

 「サブスク事業は、最初の1、2カ月を乗り越えるとうまくいくケースが多い。ラクサスの場合は、2カ月目から3カ月目にいかに移らせるかが問題だった。2カ月目以降を何とか使わせるために行ったのが、初月に1万円のポイントをあげる手法。1カ月の料金をポイントで使うと残りの3200円が余るので、1カ月だけで退会すると3200円損した気分になる。すると、ちょっと課金して2カ月目を使ってしまおうという気になる。2カ月目になると2回、3回とバッグを交換するようになり、ユーザーは『このサービスいいかも』と価値に気づくのだ。最初の1、2カ月をクリアすると3カ月目以降は使い続けてくれるというビジネスが多いと思うので、この手法は使えると思う」(児玉氏)。

 ミートアップでは4つの事例を紹介したが、サブスクはさまざまな業界で使える可能性がある、新しいビジネスモデルだ。ただし例えば、ティッシュペーパーのような安価な商品は、サブスクモデルにしても成功は難しいのでは、と若宮氏は語る。また「一生に1回、もしくは数回しか着ないようなウエディングドレスなど、利用頻度の低いものもサブスクに向かない」(同)。提供する商品・サービスによって、向き不向きがあるのだ。

 若宮氏は「顧客への提供価値に合わせて、サブスクというビジネスモデルがいいのかを考えることが大切だ」と述べた。澤田氏も「サブスク事業をしている企業は少なく、先行研究もほとんどない。今後もこのようなイベントで情報共有をしていきたい」とまとめた。

若宮氏は「安価なティッシュペーパーや、年に数回しか着ないようなウェディングドレスなどのサブスクをしてもあまり意味がない」と語る
若宮氏は「安価なティッシュペーパーや、年に数回しか着ないようなウェディングドレスなどのサブスクをしてもあまり意味がない」と語る

(写真/花井智子)