eスポーツのマーケティング効果とは?

 企業がこぞってスポンサーになるなど、eスポーツ業界は盛り上がりを見せている背景には、マーケティング効果への期待の大きさにある。

「企業側から一番期待されているのは、若年層へのリーチ。アンケートではユーザーの約75%が24歳以下で、10代が半分近くを占めている。想像よりも若年層にリーチできるというのがeスポーツのマーケティング上の大きなメリットだと言える」(大友氏)。

 広告を打つにしても、eスポーツのマーケティング価値は高い。「eスポーツのストリーミングの平均視聴時間は2~3時間。YouTubeのような数分の動画のなかで広告に触れるのと、数時間のなかで広告に触れるのではまったく価値が違う」(江尻氏)。

 ただし、江尻氏は「eスポーツが話題だからと言って安易に参入するのは危険だ」と主張する。

 江尻氏は、自チームで集計したストリーム時間とライブ視聴者数データから、両者が年々右肩上がりに増加していることを突き止めたうえで、さまざまな施策を打っている。「自社で集計した数字をきちんと集め、そのデータを企業がマーケティングとして使えるものにどう落とし込むか、データの使い道を考えることが大切。自分たちが積み上げてきた数字を使えるチームのほうが、eスポーツ業界で失敗するリスクは低いだろう」(江尻氏)。

DeToNatorの2014年から2019年6月までのストリーム時間
DeToNatorの2014年から2019年6月までのストリーム時間
DeToNatorの2015年から2019年6月までのライブ配信視聴者数
DeToNatorの2015年から2019年6月までのライブ配信視聴者数

マーケティングにどう活用すればいいのか

 では、実際にeスポーツへ参入しようと考えている企業は、どうすればよいのか。確かにPCゲームの周辺機器やエナジードリンクは親和性が高いが、それ以外の商材にはマーケティング効果があるのか疑問に思えてくる。だが福吉さんによると「視点を変えることがポイント」と語る。

 例えばエナジードリンクやゲーム機器の場合、選手に使ってもらうことでスポンサー企業の露出を図っている。一方、サッポロビールは、選手ではなく観客と結びつける広告で成功したという。「野球やサッカーなどスポーツ観戦ではビールを片手に応援するケースが多い。そこにブランディングの可能性があると感じた」(福吉氏)。確かに「選手に使ってもらう」という観点だけのプロモーションでは参入できる企業は限られてしまうが、大会の設備や観客など、別の切り口からならばさまざまな企業が活用できるチャンスはあるといえる。

 また、熱量の多いファンや視聴者を味方につけることで、より大きなマーケティング効果を生み出せる。その一例として、RAGEを運営する大友氏は「配信チャット」の事例を挙げた。

「自分が大好きなゲームの大会を支援してくれている企業なので、『○○企業有難う』というコメントがどんどん流れる。するとほかの視聴者も『そうか、○○企業がスポンサーをしてくれているからこの大会が続けられるんだ』と理解し、観戦の空気感ができてくる。そこに熱量の高いユーザー視聴者をうまく巻き込むようなプロモートをすることが大切なのだ」(大友氏)。

 RAGEの大会では、ファンや視聴者にスポンサー企業のプロダクトを愛してもらえるようなきっかけづくりにも成功している。例えば、以前の五輪で流行した「もぐもぐタイム」と呼ばれる選手の栄養補給行為がeスポーツ大会でもベーシックになりつつあり、実況解説の担当が企業のスポンサーの商品を食べながら放送することもある。そこで、大友氏もRAGEの大会に「もぐもぐタイム」を導入。「カードゲームの決勝大会で、選手ブースにチョコレート菓子を置いたところ、選手が糖分補給をしている画面が試合中の放送画面に映り、視聴者が面白がってお菓子の製品名で大喜利が始まって盛り上がった」という。

女性の参加者が増えている理由

 高いマーケティング効果が見込めそうなeスポーツだが、プレイする選手も観戦する人も男性が多いイメージがあり、女性向け商品を扱う企業も参画できるか疑問に思えてくる。

 ところが、大友氏は「最近はガールズバトルなども用意され、女性向けの大会や企画が増えてきたので、以前よりも参加ハードルがずいぶん下がってきた。感覚としては、参加者の10人に1人くらいは女性だと思う」。RAGEでは3年半の間に計10回以上大会を行っているが、今年7月の大会では初の女性ファイナリストも誕生している。「参加者、競技者としても広がっていると実感した」(大友氏)。

 女性参加者が増えた理由の1つには、モバイルのeスポーツの存在もある。「RAGEでは『PUBGモバイル』というゲームの大会を定期的に行っているが、女性の参加層は非常に多い。誰もが想像するようなゲーマーではなく、小洒落たお兄さん、お姉さんが騒いで観戦している」(大友氏)。モバイル系のゲームはスマホがあれば誰でもプレイできるので、敷居が下がり、いろいろな人が参加できるようになっているのだ。つまり、女性向け商材を扱う企業や女性顧客獲得を狙う企業も、eスポーツで十分マーケティング効果を狙える可能性があるのだ。

 日経クロストレンドでは、今後もビジネスとマーケティングとを結びつけ、eスポーツの情報を報道していく。2019年9月12日(木)~9月15日(日)に東京ゲームショウがあり、ゲームとeスポーツの情報を発信していくので、ぜひ注目してほしい。

会場:大手町ファイナンシャルシティ グランキューブ グローバルビジネスハブ東京
(写真/花井智子)