岩手県三陸釜石の海鮮卸・販売業を営むヤマキイチ商店は、ホタテを生きたまま届ける「泳ぐホタテ」を提供している。ただ、ホタテを生きたまま送るには、大きな発泡スチロール容器に海水に入れたまま送るなど手間がかかる。また、受け取る側も容器や殻の廃棄などに手数を要する。これらの課題を同社はどう解決したのか。
ホタテは、和食にも洋食にも中華料理にも使われ、日常的に食べられる食材だ。海産物の中では癖がなく老若男女に好まれる。価格も高くなく、無難な食材というイメージがある。
そのホタテのおいしさを追求し、生きたまま、最高の鮮度でお届けしているのがヤマキイチ商店だ。
「浜値日本一」(水揚げ地で最も高い価格で取り引きされている)と言われる三陸釜石の高級ホタテを、生きたまま送るノウハウを構築し、泳ぐホタテのブランドで販売。「最高のホタテを使いたい」という日本全国の高級料理店で利用されている。
高級レストラン向けのビジネスについてAB3C分析してみよう。浜値日本一なので他の産地よりも品質が高く、同じ三陸釜石のホタテよりも高い鮮度なので選ばれる理由は十分である。
しかし同社で伸び悩んでいたのは家庭向けの販売だ。AB3C分析の結果を見ると、業務用のようにビジネスとして成り立たないわけではなさそうだ。ただ生でも冷凍でも加工品でも、全国どこでも消費者はスーパーや魚屋でホタテを手に入れられる。カニやウニ、アワビのような高級食材と比較して、わざわざ取り寄せる必要が少ない。ニーズが少なければ、ヒット商品にはなりにくい。
「鮮度」優先か「手間」軽減が大切か
そこで同社は、お中元お歳暮などの贈答需要を考えたが、問題があった。泳ぐホタテは、一辺55㎝もある大きな発泡スチロールに海水と共に入れて送る。受け取った側は、重い海水入りの発泡スチロールを玄関から台所に運ぶことになる。
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