滋賀県の精肉店サカエヤは、2000年代初頭に発生したBSE(牛海綿状脳症)問題の経験から、「信頼される牛肉」を追求し、新たな贈答用のパッケージ開発にたどり着いた。ネットショップ「近江牛.com」で贈答用パッケージを前面に出した結果、BtoCはもちろんBtoBでも信頼を得ることに成功し、取引拡大に結びつけた。

「信頼される牛肉」を追求した滋賀県の精肉店は、ネットショップでどのようなイノベーションを起こしたのだろうか(写真/Shutterstock)
「信頼される牛肉」を追求した滋賀県の精肉店は、ネットショップでどのようなイノベーションを起こしたのだろうか(写真/Shutterstock)

 滋賀県の精肉店サカエヤは、地元に密着した一般的な肉屋だった。新保吉伸代表は2001年、BSEが猛威を振るった際に殺される牛や苦境に立たされる牧場主を見て、国内の牛肉流通機構を改善する必要があると考えた。

 日本では、子牛を産ませるだけの農家と育てるだけの農家が多数を占めており、血統から肥育環境、エサまでトータルで安全性を保証するのが難しい。解決方法の一つとして滋賀県内の数軒の農家に、牛を産ませ肥育まで行う「繁殖肥育一貫農業」を提案。賛同した農家の牛は全部買い取るという大きな決断をした。

 苦労の末、事業として軌道に乗せ、「血統」「出産」「肥育」「精肉」のすべての段階で安全・安心を保証する牛肉を安定供給できる体制を実現した。農家と一体となった取り組みが認められ、農林水産省の「フード・アクション・ニッポンアワード2010」のプロダクト部門優秀賞を受賞。一躍有名となった。

「ブランド牛通販」だけでは足りない

 2003年ごろ、サカエヤはネットショップ「近江牛.com」を開設した。近江牛というブランド牛が手軽に手に入るとあって、売り上げは好調に推移。当時ネットショップが一般的ではなかったこともあり、高い評価を得て、また数々の賞も受賞した。

サカエヤは2003年ごろ、ネットショップ「近江牛.com」を開設した(提供/サカエヤ)
サカエヤは2003年ごろ、ネットショップ「近江牛.com」を開設した(提供/サカエヤ)

 しかし約10年がたったころ、売り上げは限界を迎えつつあった。かつて珍しかった近江牛のネットショップが、2010年ごろから乱立したためだ。信頼が強みだったが、肉は工業製品と異なり客観的な仕様や品質の評価が難しい。安全性に関心の薄い一般家庭にとって、サカエヤが売りの肉の品質は「選ばれる理由」としては不十分だった。

 業績が伸び悩み始めたことから新保代表は、ウェブ制作会社やコンサルティング会社にネットショップの売り上げの拡大施策を求めた。しかし、検索エンジンで「近江牛」と検索すればトップに表示され、たくさんの賞を取っている有名ショップだけに、各社からは一様に「改善するところはない」という回答しか得られなかった。