ウェブ中心消費行動が生み出した超競争環境においては、明確な「選ばれる理由」が必要だ。これを明らかにするために、「3C分析」が役立つ。さらにベネフィットとアドバンテージの視点を加えると、マーケティング実務に役立てることができる。
3C分析は大前研一氏が発案したフレームワークだ。顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3者の関係を整理し、自社の勝ち目を明らかにする。このフレームワークの意味を一言で説明するなら、「競合を観よ」ということだ。当たり前のように聞こえるが、1980年代、モノ余りの時代に入り、良いものを作っても売れない時代に重要な指摘であった。ネット全盛の現代でも、改めてその意味をよく理解する必要がある。
この3C分析、ご存じの方は多いと思うが、整理した後にどう活用すべきか、悩んでいる方も多いのではないか。具体的にマーケティングにつなげるにはもう一工夫必要だ。そこで私が提案するのは、ベネフィット(Benefit)とアドバンテージ(Advantage)という視点を加えた「AB3C分析」だ。

ベネフィットとは、お客様の求める価値
ベネフィットとは、お客様の求める価値のことだ。ビールを飲みたい人が求めているのは、本質的にはビールではなく、のどの渇きを潤すことであったり、お酒を飲んで心地良くなることであったりする。のどの渇きを潤したい、ということがより重要であれば、ビール以外にもミネラルウオーターや、ジュースでもそのベネフィットは得られる。つまり、お客様はビールとミネラルウオーターを比較しており、その比較対象こそが競合である。
しかし、お酒を飲んで心地良くなりたい、というほうが重要であれば、ビールと比較しているのは日本酒、ワイン、ウイスキーなど他のアルコール類だ。それならば、競合はこれらのアルコール類ということになる。つまり、同じ商品を購入する人でも、求めている本質的な価値、ベネフィットにはバリエーションがあり、それが異なれば、比較対象である競合も変わるということだ。
そして、競合と比較されたとき、自社の商品が選ばれるためには、競合との違い、それも「好ましい」違いが必要だ。のどの渇きを潤すためにビールを買いたい人であっても、アルコールを含むビールのほうが、ミネラルウオーターやジュースよりも心地良く酔える。お酒が好きな人で、お酒を飲んでもよいシーンであれば、これがアドバンテージとなり、ビールを選ぶだろう。
一方で、お酒を飲んで心地良くなりたい、というベネフィットを求めて日本酒やワイン、ウイスキーと比較しているのであれば、ビールのアルコール度数の低さや、缶を開ければすぐに飲める点などが相対的な特徴と考えられる。ターゲットとなるお客様を、アルコールに弱い人や、屋外で飲むシーンに絞り込めば、これらがアドバンテージになり得る。
このように、ベネフィットとアドバンテージという視点を加えることで、お客様の求める価値を深掘りし、お客様の求める本質的な価値のバリエーションを発見することができる。そして、お客様ごとに優先する価値がことなることに気付き、お客様の中にもより自社商品と相性の良いお客様がいることが分かり、さらに絞り込んでいく視点が芽生える。その結果、より絞られたお客様の攻略に経営資源を集中するという戦略を生み出すことができる。これがAB3C分析の流れだ。
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