あまたあるECサイトの中から、「選ばれるECサイト」になるためにはどうすればよいのか。日本のウェブコンサルタントの先駆者として知られる、ウェブコンサルタント協会の代表理事である権成俊氏による連載の第1回。独自の「ECサイト4モデル」を基に「ZOZOTOWN」などが置かれる競争環境を分析した。

 かつてECという市場があった。近所では売っていないものを求める人、お店に買いに行くのが面倒な人、高額品をできるだけ安く買いたい人、たくさんの商品から選びたい人。これらの人たちが、インターネット検索エンジンで検索し、上位に表示されたサイトに殺到し、商品を購入した。検索エンジンで上位に表示されるだけで、売り上げは跳ね上がった。ECは見込み客を「集める」競争だったのだ。

 しかし、今そのセオリーは通用しない。消費者の行動はオムニチャネル化し、検索は消費行動のプロセスの一つのステップでしかなくなった。上位に表示され、たくさんの消費者がサイトを訪れることと、売り上げが上がることは全くリンクしなくなった。消費者は、消費行動の入り口から、最終的な購入までの間で、何度もチャネルを切り替えて行く。これが「オムニチャネル消費」である。

オムニチャネル消費のイメージ
オムニチャネル消費のイメージ

「集める」から「集まる」へ

 オムニチャネル消費の本質は、消費プロセスの分散だ。かつて消費者は検索エンジンに殺到した。しかし、インターネット上のメディアが多様化し、情報を得る手段が豊富になったことで、検索エンジンだけに依存することはなくなった。その結果、消費プロセスは分散し、サイト訪問の経路は分散した。かつての検索エンジン対策のように、特定のボトルネックを解決することで、売り上げが跳ね上がる、ということはなくなった。

 それでは、各チャネルを最適化して、より効率的に「集める」のがよいのだろうか。その方法をとったECサイトは、集客コストの増加にあえいでいる。答えはマーケティングオートメーションやソーシャルメディアの活用ではない。売り上げを伸ばすためには、分散するたくさんのチャネルから、自社のECサイトに「集まる」魅力を提供することだ。競争は「集める」集客から「集まる」価値づくりに転換したのだ。

プロセスの競争から価値の競争へ

 「集まる」価値とは、つまり他にはないオンリーワンの商品やサービスだ。圧倒的な価値があり、他では手に入らないのであれば、集客をしなくてもいずれ消費者はECサイトを訪れる。そして、1人でも消費者が訪れれば、ソーシャルメディアなどの口コミによって情報は拡散され、ネット上のメディアに取り上げられ、自然と集客力が高まる。それが今のネット社会だ。そして、Googleでさえも、いまや検索エンジンユーザーの指名検索数やサイト再訪率をシグナルとして重視していると言われている。ますます集客数は増えるのだ。

 オンリーワンの価値と言っても、大きく分けて2つに分かれる。1つは、商品がオンリーワンであることだ。しかし、仕入れ品を販売している場合、普通は同じ商品を扱っている競合がいるはずだ。その場合、取り扱い商品がどんなに価値のあるものであっても、他社が同じ商品を扱っているなら価格競争、納期競争になってしまう。

 そこで必要なのが、サービスという視点だ。同じ商品でもショップによって、試着ができたり、返品ができたり、購入後のアフターサービスやギフトパッケージが異なるものだ。そこで、同じ商品でも、自社のショップで購入したい、と思ってもらえるサービス価値を提供する必要がある。この、「商品が選ばれる理由」と「ショップが選ばれる理由」という2軸によって、ECサイトの戦略は4つに分けられる。これがECサイト4モデル式ストラテジーだ。

ECサイト4モデル式 ストラテジー
ECサイト4モデル式 ストラテジー

ブランド品か、ノンブランド品か

 ブランド品とは、すでに消費者がブランドを認知している商品で、欲しければブランド名を検索して購入するものだ。「型番商品」と呼ばれるものも同じように、消費者がその型番で検索して購入するものだ。これらはすでに消費者に対して商品の認知や品質に対する信頼を刷り込み済みであるということだ。その場合、ECサイトは単なる通販の購入窓口である。これにあたるのが例えば「Lenovo PC」のECサイトだ。消費者の多くは、すでにLenovoというブランドを認知しており、その中で自分に適したPCを選ぶだけだ。

 しかし、認知度が低いいわゆる「ノンブランド品」ではそうはいかない。例えば、楽天市場に出店しているノンブランドアパレルのメーカーショップをイメージしてほしい。そのブランド名を検索してショップを訪れる人は少ないため、売り上げを増やすには消費者との接点を増やし、認知の機会を増やすしかない。認知、理解され、商品に興味を持ってもらえさえすれば、その商品は自社オリジナルでオンリーワンなのだから、購入してもらえる確率は高い。

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