※日経トレンディ 2019年4月号の記事を再構成
デジタル全盛時代のなか、あえてアナログに書くことでアイデアを生むアウトプットの手法に注目が集まっている。それを体現するのが、誰でも簡単に生配信できる仮想ライブ空間サービス「SHOWROOM」を生み出した、前田裕二氏だ。
自らを“メモ魔”と称し、著書の『メモの魔力』(幻冬舎)は発売1カ月強で22万部を超える大ヒットを記録している。前田氏は、会議や打ち合わせ、映画などを見た際だけでなく、「このミネラルウォーターはなぜパッケージが簡素なのか」など、日常で目に付いたものを何でも記録。多くの人は立ち止まりもしないようなことを、メモ帳やスマートフォンなどに日々、膨大に書き連ねている。
一般的に「メモを取る」というと、備忘録としての役割を思い浮かべがちだが、前田流は根本的に異なる。「記録すればいいだけなら、機械やアプリで済ませればいい。人間はクリエーティブな作業に集中するべき」(前田氏)。単なる記録ではなく、イノベーションを生み出すためにメモをフル活用しているのだ。
当然、目の前の出来事や見聞きしたことをただ書くだけではない。メモを取った客観的な「ファクト」を「抽象化」することが、前田流メモ術の最大のポイントだ。
紙に残す場合、メモ帳は見開きで使うのが基本。その左ページに「ファクト」、つまり客観的な事実を書く。会議やミーティングであれば会話の内容をかいつまんで書く。映画などのコンテンツであれば、面白い場面や琴線に触れた内容がそれだ。次に右ページの左側半分には、前述のファクトを「抽象化」したもの、つまりそこから連想される気づきや法則、背景を書き込む。
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