※日経トレンディ 2019年4月号の記事を再構成

ミッションを明らかにし、自ら前線で戦い抜く。理想のリーダーを体現する経営者といえば、2014年10月にサントリーホールディングスの社長に就任した、新浪剛史氏だ。三菱商事を経て43歳の若さでローソン社長に就任。14年2月期まで11期連続増益を果たしたプロ経営者に、リーダーシップの源泉を聞いた。

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新浪剛史氏
サントリーホールディングス社長
1959年神奈川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。91年、ハーバード大学経営大学院にてMBA取得。三菱商事を経て2002年、ローソン社長に就任。経済財政諮問会議議員。世界経済フォーラムインターナショナル・ビジネス・カウンシルメンバー。14年より現職

 サントリーホールディングスの社長になって5年目、一段落するかと思いきやそんなことはありません。経営者の仕事は知れば知るほど視野が広がって、もっとこれをやらなければ、というのが出てくる。むしろ、頂上はどんどん遠ざかってなかなかたどり着けないという心境です。

 (160億ドルで)買収したビーム社との統合作業という大きな仕事を成功させるのが私のミッションです。これをやるために、日本の企業が海外の企業を買収した例をたくさん調べて、成功の条件を探りました。わかったのは、まずは経営が身の丈に合っていなければならない。そして、焦っても何もいいことはない。

「悠々として急げ」の言葉が効いた

 会長の佐治(信忠)さんの部屋に、開高健さん直筆の「悠々として急げ」という言葉が掲げてあります。佐治さんはある日私を会長室に呼び出して、色紙を指さすんです。「はて、どちらですか。悠々とし過ぎですか、急ぎ過ぎですか」。こう尋ねると「急ぎ過ぎなんじゃない? もっとどしっと構えろ」と。これが効きました。ビーム社は大きな買い物ですから結果を出さないわけにはいきません。でも、そのために何より大事なのは、我々の根本にある企業の使命を分かち合うことなんです。

14年7月、サントリーホールディングス社長への電撃就任を発表。写真左は、佐治信忠会長
14年7月、サントリーホールディングス社長への電撃就任を発表。写真左は、佐治信忠会長
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ぶつかって燃えた後にダイヤモンドが残った

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