サブスクリプションのメリットとデメリット

●ユーザーにとってのメリット・デメリット

 ユーザーにとってのメリットは主に4つある。1つは販売価格が高い商品やサービスを、手ごろな料金で利用できること。2つ目は分割払いとは異なり、飽きたり必要がなくなったりすれば、好きなタイミングで利用(支払い)をやめられること。

 3つ目は一定の品質を保証しているため、不具合があれば対応してもらえ、バージョンアップも無償で受けられること。4つ目は使いすぎる可能性もあるサービスの場合でも、支払金額が青天井になるリスクを避けられること。

 デメリットはユーザーが加入していることを忘れて、余計な支払いをしてしまう可能性があること。あるいは注意点として、現在のような玉石混交時代では「一定期間やめられない制限がかけられている」「平均使用回数でかかる金額より、利用料金が高く設定されている」など、ユーザーが本来のサブスクリプションにはない不利な条件を負わされるリスクも増えていること。

●企業にとってのメリット・デメリット

 サブスクリプションを提供する企業のメリットは3つある。第1は売り上げが平準化できること。たとえばソフトウエアを売り切りで販売する場合、次のバージョンアップまで購入は期待できない。しかし定額制のサブスクリプションであれば、契約が続く限り収入を得られる。

 第2は安定した収入で事業リスクを低減できること。たとえば月額定額制の場合、現時点のユーザー数から翌月の収益(会員数×月額料金)が予測できる。チャーンレート(解約率)を織り込めば、保守的な見積もりにもなる。月次の継続収入であるMRR(Monthly Recurring Revenue)は、定額制ビジネスの重要な経営指標となる。ユーザーを引き付けられている間は、将来の収入も予測でき、固定費を合わせることで採算ラインを読むことが容易になり、物販モデルよりも高い精度で将来のキャッシュフローを予測できる。結果、事業価値を評価しやすくなり、資本市場とのコミュニケーションも取りやすくなる。

 第3は新しいユーザーにアプローチしやすくなること。高額なサービスや商品などでも、毎回の利用料金は少額になるため、購入をためらっていた潜在層にもアプローチしやすくなり、ユーザー数の拡大が期待できる。

 企業のデメリットは主に2つ挙げられる。第1は利益の回収が長期にわたること。売り切りの物販モデルでは一度で回収できた利益が、定額制では薄く長く回収することになり、利益確定まで時間がかかるため、事業を継続できるだけのキャッシュが必要となる。既存企業であれば留保利益を運転資金として準備する必要があり、新規事業であれば資本提供者から調達するなどのファイナンスが不可欠となる。

 第2は単に課金形態を定額にするだけでは、潜在ユーザーの興味を引くのに十分ではないこと。サブスプリクションでは販売後にユーザーに寄り添う姿勢が何より重要となる。そのためサブスクリプションのユーザーに何かしらの特別感や優越感を与えるなど、明確な価値を感じてもらう必要がある。

サブスクリプションの歴史

サブスクリプションについて詳細に解説した川上昌直教授の最新刊『「つながり」の創りかた: 新時代の収益化戦略 リカーリングモデル』(東洋経済新報社)
サブスクリプションについて詳細に解説した川上昌直教授の最新刊『「つながり」の創りかた: 新時代の収益化戦略 リカーリングモデル』(東洋経済新報社)

 17世紀のドイツで出版社が事前に集金し、分冊タイプの百科事典を製作・発行したのがサブスクリプションの発祥といわれている。日本では古くからある新聞や牛乳の配達サービスが、この一種といえる。

 現在流行している形のサブスクリプションサービスで最初に大成功を収めたのは、米国カリフォルニア州に本社を置く顧客関係管理(CRM)ソリューションのクラウド・コンピューティング・サービス提供企業「セールスフォースドットコム(salesforce.com)」である。1999年3月、マーク・ベニオフによって設立され、翌年4月、日本法人を設立。顧客関係管理ソフトのビジネスアプリケーションおよびクラウドプラットフォームをインターネット経由で提供する、月額定額制を始めた。

 また2011年、デザイン・DTPの業務ソフトウエア「Adobe(アドビ)」が、「Creative Cloud」と呼ぶ年間契約のライセンス形態に移行した際、日本でもカタカナの「サブスクリプション」の認知度が高まった。さらに2015年、ネットフリックス、翌2016年にスポティファイが日本でサービスを開始するに至り、一般にも広く知られるようになった。

 2018年に入るとデジタル系だけでなく、物販や外食のいわゆるモノ系サブスクリプションを提供する企業も現れた。しかし中には「ユーザーに有利なサービス」という特徴を持たず、ただ「定額制課金」による継続収益を求めただけのものも多く、今後、淘汰が起こると予想される。

サブスクリプションの実例

●定額制のサブスクリプション

 定額制(定量制)課金の例としては、先に紹介した「セールスフォースドットコム」「アドビ」「ネットフリックス」「スポティファイ」、あるいは「Amazonプライム」などデジタル系にサブスクリプションの成功事例が多い。今後、注目したいのは使った分だけ料金を支払う「従量制課金」である。

●従量制のサブスクリプション

 従量制課金のサブスクリプションの成功例の1つは、2008年にダイムラーが発表したカーシェアリングシステム「car2go(カーツーゴー)」。1度登録すれば、携帯電話やパソコンから予約して、専用駐車場のメルセデスベンツを利用できる。料金は走行距離に関係なく、1分ごとに課金される。2019年、ダイムラーの「car2go」とBMWのカーシェアリングサービス「DriveNow」は、「SHARE NOW」に統合された。

 ミシュランの「マイレージ・チャージプログラム」もサブスクリプションの好例だ。これは自動車の走行距離に応じてタイヤ使用料を支払うサービス。他にもロールス・ロイスが製造する飛行機のエンジンは、飛んだ距離に応じて課金する従量制のサブスクリプションである。

 また、スペインのコメディー劇場で、顔認証の技術を活用して、「口角が上がる」などのパラメーターから笑った回数をカウントして、それに応じて課金しているのも、一種の従量制課金のサブスクリプションと言える。これらのように、サブスクリプションは、定額制、従量制、ともにさまざまな分野で実績を上げている。