作業服大手のワークマンが大量出店へと動き出した。これから出す新店は、すべて一般客を狙った新業態の「ワークマンプラス」にする。2019年3月に一挙8店を出店し計12店に。1年後の2020年3月末には68店にまで増やす考えだ。ハイスピードな出店を支える秘策とは──。
快進撃は、郊外から始まった。職人御用達の作業服メーカー、ワークマンが一般受けを狙って始めた「ワークマンプラス」。1号店に選んだのは、多摩都市モノレール立飛駅直結のショッピングモール「ららぽーと立川立飛」(東京都立川市)だった。
銀座や原宿から華々しく、と思わなかったわけではない。ワークマンの土屋哲雄常務は、実際に銀座まで足を運び、半日間、人の流れをつぶさに観察した。
「結局、(目当ての商品がある)目的買いか、お茶を飲みに来る人しかいなかった。誰も立ち止まってウインドーショッピングをしない。チラチラも見ないところは、絶対行っちゃ駄目だと思った。失敗するならひっそりと。郊外だったらまだ挽回できる。3年ぐらいで捲土(けんど)重来するつもりだった」と土屋氏は振り返る。
同時期に出店し、差分を見る
立川に店を出したのは、季節の変わり目である18年の9月。ワークマンにとっては、一番売れ行きが伸び悩む時期だった。恐る恐るの出店だったが、これが前回(「ワークマン驚異の原価率65% アマゾンに定価で勝てるモノづくり」)の通り、大ヒットした。
続く2号店は一転、路面店だった。18年11月8日、川崎市多摩区の府中街道沿いに川崎中野島店を出店。約300平方メートル(90坪)の売り場には、一般客向けのアウトドアウエアに加え、プロ仕様のスタイリッシュな作業着も並べた。
そして同月22日には、再び商業施設内にららぽーと富士見店を出店。165平方メートル(50坪)の小型店で、扱う商品も一般向けに絞った。タイプの異なる店を立て続けに出したのも、差分を見たかったからだ。「同時期に2店舗出すと実験ができる。すべてがABテストだ」と土屋氏は狙いを語る。
19年3月には、大阪、広島、福岡の既存3店をワークマンプラスに全面改装する。これも、「すごくはやっている店、まあまあの店、普通の店」(土屋氏)と、立地も売れ行きもあえてバラバラの店を選んだ。改装費に対して、どこが一番元を取れるか。どのタイプの店が一番伸びるかを見極めるためだ。それによって今後、改装する店を絞り込んでいくという。
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