職人御用達のイメージが強かったワークマンが、時代の先端に躍り出た。2018年9月、一般向けの新業態「ワークマンプラス」の出店を開始。プロ品質のカジュアルウエアが激安価格で並び、ワークマンから縁遠かった消費者が飛びついた。他社がまねできない安さは、綿密な計算の上に成り立っている。
知られざるベストセラーがある。ワークマンの商品カタログだ。発行部数は約40万部。春夏と秋冬で商品を入れ替えるため、年間80万部を発行している。
このカタログはインターネット上でも公開しており、「ネットではそれ以上の方が見ている。しかも全100ページ程のうち8割のページが読まれている」。こう語るのは、ワークマンの土屋哲雄常務だ。カタログがここまで熱心に読み込まれている企業は、日本広しといえどもそうそうないだろう。
例えば、発行されたばかりの春夏向けの最新カタログを開いてみる。「遮熱ダブルメッシュ」「放熱冷感」「立体成型」「消臭アニエール加工」など、一般にはなじみが薄い専門用語があちこちに躍る。
遮熱、冷感、放熱、通気、ストレッチなど、すべての商品に何らかの機能が加えられており、そのどれもが例外なく安い。「ICE ASSIST(アイスアシスト)」と書かれたTシャツは、放熱率89.8%。素早く熱を外に逃がしながら、触るとひんやりする「接触冷感」と呼ぶ機能を盛り込んだ。価格は、499円(税込み・以下同)とワンコインに満たない。
土屋氏は「目指すは原価率65%」と公言してはばからない。原価率とは売価に占める製造原価の割合のこと。つまり、原価率が高いほど消費者にとってはお買い得ということになる。65%というのは、アパレル業界ではあり得ないほど高い数字だ。
「同質な競争をしちゃ駄目だ。消耗戦になって、残業が増えてつまらない世界に入る。うちは、Amazonに定価で勝てる、価格ドットコムで一番になるモノづくりしかしない」(土屋氏)。ダントツに安いが、安かろう悪かろうではない。しっかりと品質や機能性を保証する。それがワークマンの生命線であり、だからこそ、多くの職人に愛されてきた。
まず先に売価を決める「1円、2円のしのぎ合い」
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