100%過小評価していたブランド力

 「ワークマンのブランド価値を見誤っていた。100%過小評価して、私はワークマンという名前を消そうとさえ思った。だからWMプラスにして、ロゴまで作った。しかし、(1号店として選んだ)ららぽーとは『そんなの駄目だ、店名にワークマンを付けなきゃ入れない』とまで言ったんですよ」(土屋氏)。

 ワークマンはプロが使っている。つまり、職人品質である。職人御用達だから、ワークマンを付けることで一段上の品質だと消費者にアピールできるというのが、ららぽーとを展開する三井不動産の見方だった。

 「目からうろこだったよな。まさかワークマンにそんなブランド力があるとは。社員の士気も上がった。プロ品質、作業服、プロの誇り、職人品質、これが受けるんだと」(土屋氏)。

 土屋氏は当初、一般客にブランドを認知してもらうまでは3年かかると考えていた。「アウトドアやスポーツは、既存のブランドが強いから、3年間は赤字の計画を立てていた。でも、日本の消費者の価値観は私が思っていたよりも変わっていた」。

 実際、ワークマンプラスは大当たりした。1号店のららぽーと立川立飛店は、年間売り上げ目標を1億2000万円と見積もっていたが、それをわずか3カ月間で達成。すぐさま、目標を3億円に引き上げた。その後、ららぽーと富士見店も1号店同様、最大2時間の入場制限が発生。路面店の川崎中野島、等々力両店は、開店時の売り上げでららぽーとの両店を上回った。

ワークマンプラスのららぽーと富士見店。開店時には最大2時間の入場制限ができた
ワークマンプラスのららぽーと富士見店。開店時には最大2時間の入場制限ができた

「7割は1ロット」ロングテールが新業態を生む

 ワークマンの強みは1700品目もの豊富な品ぞろえにある。これはニトリとほぼ同数だ。

 「ワークウエアはロングテール。例えば、地上10メートルの高さで作業するための安全靴がある。(こうしたニッチな商品を)買い求める職人がいる以上、品目数を合理的に減らすことはできない。うちは1ロット(しか製造しない商品)が7割。これまではロングテールであることが足を引っ張ってきたが、逆にあるカテゴリーのみを切り出せば、新たな業態を作りやすいことに気づいた」(土屋氏)。

 ワークマンプラスは、まさに全1700品目のうち、一般客向けの300品目余りを抽出して始めた業態だ。だから、既存のワークマンでも、ワークマンプラスの商品は買える。そのことを周知する広告を出すことで、既存店も客数、売上高ともにうなぎのぼりとなった。WMプラスではなく、ワークマンプラスという名で店舗展開したことも間違いなく、既存店にプラスに働いた。

 目指すは「一般客も7割が自分に関係ある商品だと感じる店」(土屋氏)だ。プロ仕様とはいっても、一般客が使えないわけではない。むしろ、プロ仕様だからこそ、丈夫で長持ちする。

 実際に、客足が伸びるとともに、ワークマンも想定していなかった用途で、プロ向けの商品が飛ぶように売れるようになった。その最たるアイテムが、「綿かぶりヤッケ」だ。

 ヤッケとはフード付きの上着のこと。生地は綿100%で火花が飛び移っても燃えにくいため、溶接工が愛用してきた。しかし、これがキャンプにも最適だとインターネット上で拡散。溶接用の手袋も、鍋が持てる、火を起こすのに使えると話題を呼び、品薄状態となった。

 一般客にとって、安くて丈夫なワークマンの商品はまさに“宝の山”だった。しかし、ワークマン側がこれまで、適切な用途を提案できず、潜在客を取りこぼしていたのだ。

 土屋氏は毎日、ヤフーのリアルタイム検索を確認し、「『こんなものにも使える』という用途を見ている。いい意見があったら、すぐにそのまま作っちゃえ」と指示するという。

 実際、バイク用の手袋も、そうした利用者の投稿を基に商品化した。春夏ではライブやスポーツ観戦に使えるスタイリッシュな空調ウエアを5万点量産。女性用のSサイズを37品目で投入し、新店のららぽーと甲子園、ららぽーと湘南平塚の両店では、女性専用の売り場を設けるなど、さらに客層を広げる挑戦に出る。

 ワークマンは今後、どのように店を広げ、業績を伸ばしていくのか。その戦略も実に緻密に計算されている。