糸から開発、自ら素材を発掘

 65%という高い原価率を達成すべく、生地はもちろん、その前段階の糸から工場と二人三脚で試作を重ねる。海外生産とは言っても、なかには米アンダーアーマーの製品を手掛けている工場も含まれており、開発力は高い。

 例えば、先述した接触冷感シャツは独自開発のナイロン糸「DEEP ICE(ディープアイス)」を使っている。通常のTシャツは表も裏もポリエステルで編むのが一般的で、ナイロンはポリエステルよりもむしろ高価だ。しかし、自ら糸を開発し、編み方を工夫することで、通気性を確保しながら熱を逃がす生地をつくり上げ、499円で提供することに成功した。これも「絶対に499円で売る」と決めたから、形にできた代物だ。

 「縫製のやり方を少し変えるだけで、生産効率が上がる。一方、売価との兼ね合いで、無駄な機能は省くこともある」と北村氏は言う。さらに、新たな発見を求めて海外の展示会に足しげく通う。名は通っていないものの品質が高い、そんな知られざる素材を見つけることで、原価を大きく抑えることができるからだ。

 もちろん、他社製品の研究も怠らない。東京・上野の開発拠点にはサンプルルームがあり、海外で調達した有名ブランドの商品がずらりと並ぶ。特に価格で参考にしてきたのが、デカトロンだった。北村氏自身も「中国に行くと、必ずデカトロンの店舗は見てくる」と話す。

 そのデカトロンをベンチマークして生まれた商品が、この春夏で大々的に展開する「冷感リフレクティブ」だ。吸汗速乾、冷感性のある生地「ICE TECH(アイステック)」を開発し、軽量でソフトな質感に仕上げた。肩や背中などに反射材がついており、夜に走り込むナイトランの需要に対応。なおかつ、紫外線を90%以上カットする機能を併せ持ち、半袖で580円、長袖でも780円と破格だ。

 こうした機能性のテストは必ず第三者機関に依頼し、そのお墨付きを得ている。明るい色も含め、多色展開しているため、仮に1色で高い数値が出ても、全色で同じ結果が出ない限り、パンフレットや店頭ではうたわない。テストを通過し、全色で究極の「紫外線99.5%カット」を達成したTシャツが、その名も「肌がさらさらZERO DRY」。1秒で吸水し、素早く蒸発するというアイテムながら、やはり半袖長袖ともに980円と激安だ。

一般向けの新業態はなぜ生まれたのか

 ワークマンは1980年、群馬県伊勢崎市で「職人の店 ワークマン」として誕生した。ショッピングセンターのベイシア、ホームセンターのカインズと共にベイシアグループの一翼を担い、店舗数は19年1月31日現在、全国で832店。これはユニクロの国内店舗数に匹敵する。

 しかし、「職人の店」と最初から対象を限定したこともあり、一般客にはずっと縁遠い存在だった。なぜ、このタイミングで新業態を始めたのか。

 「昔はワーク(業界)しかやらないのが社是だった。とにかく他社と競争したくない会社だから。ただ、ブルーオーシャンだから、ワークしかやらなかったとも言える。また、ブルーオーシャンを作ればいい」(土屋氏)。空白市場に攻め込むべく、戦略的に作り上げたのが「ワークマンプラス」だった。

 実際に商品の品質は毎年2~3割ずつ改善されていたという。「でも、売り上げは3%、4%しか伸びていない。これはたぶん売り方が悪いんだろうと。それがちょうど3年前だった。商品部が悪いんじゃなくて、売る部隊を変えないと。だって、商品は20%、30%(売り上げが)伸びてもおかしくない品質だったから」(土屋氏)。

 一般客に受けないのは、「作業服」「仕事着」という言葉が悪いのではないか。土屋氏はそう考え、ホームページや採用ページから「作業」「仕事」という語句をことごとく削った。スポーツウエアのFind-Outに、アウトドアウエアの「FieldCore(フィールドコア)」、レインスーツの「AEGIS(イージス)」とブランドを分け、スタイリッシュな商品づくりを始めたのもこの頃だった。この3ブランドを中心に、新業態を立ち上げると決めたものの、当初は「WMプラス」という名前で店を出す予定だったという。