日本、米国、中国で導入への取り組みが進む省人型店舗。「Amazon Go型」とも呼ばれるウオークスルータイプが一つの解となりそうな兆しだ。一方、特に人手不足が激しい日本においては、省人化に効果的なレジ回りのソリューションが続々開発されている。「リテールテックJAPAN 2019」で編集部が注目したソリューションを紹介する。
省人型店舗の導入は日本以上に米国や中国で進んでいる。その一つの典型的なスタイルが、「Amazon Go型」といわれるものだ。欲しい商品を手に取り、店を出れば支払いが終了する──。米アマゾン・ドット・コムが展開中のレジなしコンビニAmazon Goはウオークスルータイプとも呼ばれ、その驚異の買い物体験が大きな注目を集めている。本特集では、さまざまな企業が同様の店舗を実現しようとトライしている様子を紹介してきた。
本来のAmazon Goは、単純に人手を減らすことが目的ではない。目指すのは、ECのように「消費者に“プライス、セレクション、コンビニエンス”を届けること」(米アマゾン・ドット・コムのジアンナ・プエリーニ副社長)だという。
日本の焦点はレジ回り
しかし、特に人手不足が深刻な日本では、コンビニなど小売り流通業を筆頭に、「省人化」を最優先課題とした店舗の開発が求められている。野村総合研究所未来創発センター長の桑津浩太郎氏は、「省人化はもはや待ったなしで、やらざるを得ない」と強く主張した。
多くの人手を要する小売り流通業では、特に「決済」プロセスの改善に躍起だ。「『品出し』と『検品』、そして『決済(レジ回り)』が最も人手がかかるところ。品出しと検品はすぐには自動化できないので、現時点では決済プロセスの改善に集中するのは正しい」と桑津氏は言う。
セルフレジやスマホレジ、電子タグ(RFID)の読み取りに対応したレジの活用まで、積極的な取り組みを見せるローソン。「スマートレジカート」を導入し、省人化だけでなく売り上げアップを狙うトライアル。そこには「できることは何でもやらなければ」といった焦燥感が漂う。
ただ、顧客の利便性や購買体験を損なってしまっては、せっかくの省人化努力が報われない。店舗側の効率と顧客メリット、そのバランスを取りながら、しかもスピード感を持って省人型店舗を実現する──この難しい課題を解決するため、ベンダー側もソリューションの開発に力を入れている。2019年3月5~8日に開催された「リテールテックJAPAN 2019」で発表されたさまざまなソリューションの中から、編集部が注目したものを紹介する。
関西のスーパーとレジレス実証実験
POS(販売時点情報管理)レジ大手の東芝テックは、スマートフォンを活用したレジレスサービスの市場が広がると見て、スマホレジを大きく展示していた。コンセプトは「ユニファイドコマース」だ。統合型コマースという名のこのコンセプトは、単純に販売チャネルだけではなく、買い物体験まで消費者の手元のスマホを軸に統合する。ECサイト、POSレジ、そしてスマホアプリを活用したセルフレジなどを総合的に提供。ネットと店舗を統合した、プラットフォームを構築できるサービスで流通業を支援する。
買い物客はカートに自分のスマホを装着し、アプリのカメラ機能で商品のバーコードを読み取ることで、カートに商品が追加される。最終的にアプリ上に表示したバーコードを専用の決済端末で読み取ると、合計額が表示される。あとはクレジットカードか現金で決済するだけ。買い物の途中に、その場でクーポンを受け取ることもできるという。
消費者のスマホをレジ代わりに活用する取り組みは、ローソンが19年9月までに1000店舗まで拡大するなど、新たなレジレスサービスの1つとして注目を集めている。一方、課題もある。例えば、読み取る振りをして、そのまま決済せずに店を出てしまう不正、いわゆる万引きを見分けにくい。そこで東芝テックは、こうした不正を防ぐために映像解析を活用したトラッキング技術も含めた実証実験を、関西のスーパーチェーン近商ストア(大阪府松原市)と共同で始めた。
この実験では、来店者に、レジアプリをインストールした専用スマホを貸し出す。併せて、売り場全体にカメラを設置して映像を解析し、不正を検知する。スマホレジの場合、来店時にQRコードを読み取って認証する必要があるため、その時点で来店者が誰かを把握できる。その後、店内の行動を映した映像と決済情報を組み合わせて分析することで、手に取ったはずなのに決済をしなかった商品がないかを検知するというものだ。実証実験は、3月4日から4月12日まで実施する。
その他、無人店舗ベンチャーのVAAK(東京・千代田)のカメラ映像とAI(人工知能)を活用した無人決済サービス「VAAKPAY」を活用した、Amazon Go型店舗のデモを東芝テックのブース内に設置。多くの来場者の関心を集めていた。
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