「Amazon Goの目的は、人件費を浮かすことではない」──省人型店舗の先端を行くAmazon Goだが、その究極の目標は、データを活用し、快適な買い物体験を得られる店舗へ進化することにある。その目標をいかに達成しようとしているのか。Amazon Go最新店舗の造りや棚、商品の構成から考察した。
「Amazon Goの目的は、人件費を浮かすためではない」
米アマゾン・ドット・コムで「Amazon Go」を担当するジアンナ・プエリーニ副社長はリテール業界のデジタル関連総合イベント「Shoptalk」でこう語った。Amazon Goの開始から2カ月後の2018年3月のことだ。
データを活用し店舗が進化していく
「まず、サービスの向上。レジの担当者が必要なくなり、商品の説明をするなど顧客サービスに時間を使える」
「次に、顧客をより深く理解できること。Amazon Goでは、顧客行動と購買の詳細データが取れる。どんな消費者がいつ、何を手にし、どんなふうに店の中を動いて、何を購入したか。そうした情報を基に、より欲しい品ぞろえ、買い物がしやすい店舗へと進化していくことができる」
プエリーニ副社長は、「Amazon Goの目指すものは、アマゾンの目指すミッションと同じ」と語った。それは「消費者に、“プライス、セレクション、コンビニエンス”を届けること」である。その打ち手の1つとして、Amazon Goを導入したというのだ。
プエリーニ副社長が説明した、データサイエンティストの活用についての話も興味深い。
「Amazon Goの計画初期に決めたのは、優秀なデータサイエンティストを確保し、どう配置するかだ。データは業務と直結して生かされて初めて価値がある。データサイエンティストをデータチームとするのではない。Amazon Goの企画・準備の段階から、オペレーション、仕入れなどの各部署に配置し、チームの中でデータを生かしていくようにした」と説明した。
こうした戦略をどのように実行しているのか? データを活用して、消費者体験や品ぞろえをどう変えているのか? アマゾンの最新店舗の造りや棚、商品の構成から考察してみた。
データを使った変化を見るために最適なのが、米サンフランシスコ市内に18年12月にオープンした同市内の2店舗めだろう。1店舗めと同様にビジネス街に開いたものだが、床面積は8割程度の162平方メートル(約50坪)であり、日本のコンビニエンスストアのような形態だ。ビルのロビーや空港などへの導入も想定していると考えられる。
メインのターゲットを金融街(ファイナンシャルディストリクト)で働くビジネスパーソンに絞っているのだろう。「短時間で買って、オフィスですぐ消費する」という彼ら・彼女らの購買行動を徹底的に分析していると感じた。
コンビニをさらに絞った商品構成
1店舗めでは常温棚27個、冷蔵棚29個でほぼ同じだったが、2店舗めでは常温が20個に対して、冷蔵が26個となっている。つまり冷蔵された食事類、例えばデリやサラダ、サンドイッチ、飲料などの比率が高い。
具体的な店舗の設計や商品選びに、顧客行動のデータをどのように活用しているのか。
まず、店舗デザインへの活用。2店舗めでは、顧客が訪問する時間帯別に、棚を設置していると考えられる。日本のコンビニのようなコの字型の棚構成だ。
入り口から右側手前のコーナーが朝食用、左手手前が昼食時とスナック用、一番奥のエリアが夕食時の利用が多そうな、軽食や飲料の冷蔵棚だ。
立ち寄る時間帯で必要なものがまとめてあるので、その場所に行くだけで短時間に買い物を終えられる。飲料も、オレンジジュース、スムージー、スターバックスのラテ、エナジードリンクなどは「朝」のコーナーに置かれている。顧客の時間ごとの動線データを詳細に分析し、こうした設計にしたのだろう。
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