東日本旅客鉄道(JR東日本)が省人型「キオスク」の普及に本腰を入れる。2年にわたる「Amazon Go」型店舗の実証実験の結果を受け、システムの実用フェーズに入った。子会社のJR東日本スタートアップ(東京・新宿)を通じ、省人型店舗の専門会社設立の検討を開始。将来的にはシステムの外販も視野に入れる。
設立に向けて2019年2月21日に基本合意書を締結した新会社は、AI(人工知能)を活用した無人決済システム「スーパーワンダーレジ」を開発するサインポストとの共同出資会社となる。JR東日本スタートアップは、ベンチャー企業と共同でJR東日本の持つ資産と新技術を組み合わせた新事業を創出する役割を担う。
JR東日本にとって、「省人化」は大きなテーマの1つ。企業と利用者に提供する価値が明確なため、積極的に取り組んでいるという。特に課題なのが地方だ。人手不足による人件費の高騰で、地方店舗の採算が合わなくなっている。「売店は駅や地域にとって必要な機能」(JR東日本スタートアップの阿久津智紀マネージャー)だが、赤字を垂れ流すわけにもいかない。省人型店舗の実用化は、JR東日本が地方店舗を維持するうえで必達の目標と言える。
そこで実用化を目指し、JR東日本スタートアップはこれまで2回、サインポストと共同で「Amazon Go」型の無人決済店舗の実証実験に取り組んできた。Amazon Go型店舗とは、店内に設置したカメラ映像などをAIが解析して、来店者が手に取った商品を認識。退店時に自動的に決済される仕組み。
最初の実験は、17年11月に埼玉・大宮駅で実施。駅構内のイベントスペースにテスト的に店舗を設置した。18年10月17日~同12月14日には実用化に向けて、本格的な実証実験を行った。舞台となったのは東京・赤羽駅だ。5、6番線ホーム上に小型の無人決済店舗を開設して、実際に消費者が体験できる場を設けた。
JR東日本スタートアップの店舗と、Amazon Goの最大の違いは店のサイズだ。駅構内やホームに設置することが多いため、小型にならざるを得ない。ところが「小型店舗の方が(Amazon Go型を)実現するのは圧倒的に難しい」と阿久津氏は言う。赤羽店を解剖することで、実現する苦労や工夫点、そして今後の課題が浮かび上がる。これらのポイントは、同社に限らず小規模店舗の省人化を目指す企業であれば、避けては通れない道だ。
省人店のシステムは実用フェーズに
赤羽の店舗は、駅構内にある小型の売店、いわゆる「キオスク」を無人決済店舗化したもの。入り口のカードリーダーに「Suica」などの交通系電子マネーのカードをかざすと自動ドアが開く。店内では、天井や商品棚などに取り付けられた100台を超えるカメラの映像を、AIが自動解析して、来店者と手に取った商品をひも付ける。商品写真などは事前にAIに学習させておく。
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