眼鏡チェーンのジンズが東京・上野駅構内に開設した新型店舗が集客を伸ばしている。同店は店内に在庫を置かず、スマートフォンでネット注文するショールーミングに特化している。レンズ加工などの作業が発生しないため、通常店舗の半分の人数で運営できる。目指すのは「ECの具現化」だ。

2019年1月25日、眼鏡チェーンのジンズは東京・上野にAI(人工知能)やショールーミングに対応した次世代型店舗「JINS BRAIN Lab. エキュート上野店」を開設した
2019年1月25日、眼鏡チェーンのジンズは東京・上野にAI(人工知能)やショールーミングに対応した次世代型店舗「JINS BRAIN Lab. エキュート上野店」を開設した

 「(上野店は)来店客数は1.5倍に増加した。従来は40~50代が客層の中心だったが、20~30代の来店者が増え、客層の拡大にもつながっている。ただし、売り上げが想定していた数字に届いていない点は、今後の課題だ」

 ジンズの向殿文雄デジタル事業部長はこう明かす。上野駅構内の商業施設で運営する「JINS BRAIN Lab. エキュート上野店」は、リアル店舗でありながら来店者がスマホアプリ「JINS」を使って、ネット上で買い物をする完全ショールーム型店舗だ。店舗に見本として商品を陳列しているものの、バックヤードには原則的に商品在庫を置かない。

 来店者が買い物をする場合はまず、店頭に掲示されているQRコードをJINSアプリのカメラ機能で読み込む。これによりアプリが上野店専用の「BRAIN Lab.モード」に切り替わる。上野店で買い物をするには、アプリのモードを変える必要がある。店頭に陳列されている商品のフレームには、すべてQRコードが貼られている。試着して気に入ったフレームのQRコードをアプリで読み込むことで、お気に入り一覧に追加していける。

 店頭で検眼した測定結果を印刷したレシートにも、QRコードが掲載されている。これをアプリで読み込むことで、検眼データも登録される。自宅でお気に入りに登録したフレームの一覧から、欲しい商品を選んで注文すれば、視力に適したレンズが取り付けられた状態で自宅に配送される。掛け心地を調整をしたい場合は、対応店舗での受け取りを選択すれば、受け取り時に調整できる。

検眼結果を印刷されたレシート。掲載されているQRコードをアプリで読み込むことで、適したレンズが取り付けられた眼鏡をアプリから注文できるようになる
検眼結果を印刷されたレシート。掲載されているQRコードをアプリで読み込むことで、適したレンズが取り付けられた眼鏡をアプリから注文できるようになる

AIが眼鏡の「似合い度」を測定

 また、AI(人工知能)が眼鏡の「似合い度」を測定してくれる、AIミラーが3台設置されているのも特徴だ。商品の眼鏡を掛けた姿を鏡に映すと、その眼鏡が似合っているかどうかがパーセンテージで表示される。ジンズの全く新しい業態であることと、AIミラーの物珍しさなどが新たな客層の集客につながっている。この集客力をいかに購買に結び付けるかが、次の課題になる。

AIが眼鏡の「似合い度」を測定するAIミラー
AIが眼鏡の「似合い度」を測定するAIミラー

 同店では、基本的に商品をネット経由で購入してもらう。レンズの加工や商品在庫の管理といった作業が発生しないため、これまでよりも少人数で運営できる省人型店舗という位置付けだ。他店と比べて人件費などがかからない分、10%割引きで商品を提供する。

 ジンズがこうした新型店舗の実験を進める目的は2つ。1つは商圏の拡大だ。「これまでの形態の店舗で出店できる店舗数は、国内500店舗が限界と見積もっている」と向殿氏は言う。これまでの形態の店舗とは、レンズの加工機を設置し、バックヤードにメガネフレームの在庫を抱える一般的なメガネ店のことを指す。機器の設置など、一定の売り場面積を必要とする。現在の店舗数が362店舗であることから、従来形態の店舗は140店程度で国内は出し尽くてしまう計算になる。将来的にさらなる店舗網の拡大を目指すうえで、より小規模なスペースで成立する新たな店舗の形態を模索していた。

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