ショート動画共有アプリ「TikTok」。人気の「ハッシュタグチャレンジ」では、直近でソフトバンクのワイモバイルが再生回数1億超えの大ブレーク。その成功要因は、常時いくつもの企画が走っているチャレンジの中で、“マンネリ回避”の仕掛けを盛り込んだことにあった。また、本格展開が始まった運用型インフィード広告をJR東日本が活用。その成果は?
TikTok特有の動画投稿文化と言えるのが、ハッシュタグチャレンジだ。用意された楽曲や振り付けをまねして動画を撮影し、特定のハッシュタグを付けて投稿するだけという手軽さが受け、ユーザーの実に52%がハッシュタグチャレンジのキャンペーンに参加した経験を持つという。例えば、2018年の国内人気投稿件数ランキングで断トツの1位に輝いた「#全力顔」(121万6734件、18年12月時点)は、「全力まるまる始めるよ!」というイントロから入って、「全力笑顔!」「全力決め顔!」などの掛け声に合わせてポーズを付けるだけ。約61万人のフォロワー数を誇るインフルエンサーのこたつさんが考案したチャレンジで、いくつものバリエーションが展開されている。
こうしたハッシュタグチャレンジは、ティックトッカーや企業発の自然発生的な仕掛け、TikTok公式のもの、そして特集第1回「若者マーケで大成功 キリン午後ティーが捉えたTikTok女子」で紹介したように、広告メニューとしても展開されている。企業にとってはTikTokユーザーに受け入れられやすいど真ん中のプロモーションになるだけに、「起動画面広告などがセットで1500万円から」(ネット広告業界関係者)と、強気の料金設定だという。では、直近ではどんな企業プロモーションが話題を呼んだのか。
「既視感のなさ」がバズる条件
下表は、博報堂グループのデジタルマーケティング支援企業、スパイスボックスが調査した結果だ。同社は、「いいね!」やシェア、コメント、リツイートなどFacebookとTwitterでの総アクション数、SNS上の口コミ総数から独自のエンゲージメント数を算出するツール「THINK」を展開。これを使い、18年9月~19年1月に行われたTikTok投稿のうち、エンゲージメント数が高いハッシュタグ上位30件から企業プロモーション事例(広告、非広告問わず)を絞り込んだ。そのうち、TikTok内での視聴回数が多かった上位6事例がリストアップされている。
調査をしたスパイスボックス事業統括責任者の森竹アル氏によると、これらのハッシュタグキャンペーンにはいくつかの成功ポイントがある。まず、キリンビバレッジの事例でも紹介したが、手軽にまねしやすく、自分を「盛れる」こと。そしてキャンペーンに参加することで有名になれる可能性をつくること。また、特に重要なポイントが、「“飽きやすい”若年層を捉えるために、TikTok上で既視感のない振り付けやエフェクトを活用すること」(森竹氏)だという。
象徴的なのが、今回のラインアップでTikTok上の視聴回数がトップだった「#と思いきやダンス」だ。ソフトバンクのワイモバイルが、18歳以下を対象にした「ワイモバ学割」を訴求するために18年12月から行ったキャンペーンの一環。テレビCMでは芦田愛菜などがダンスを披露し、YouTubeでは青山テルマやkemioが登場。そしてTikTokでは、ファン数120万超えのねおさんや、同約88万のひなたさんなどが公式動画をアップし、テレビCMの出演権をフックにして投稿を募った。「TikTok上では、動画の冒頭で有名な『全力まるまる』シリーズをオマージュしつつ、その後は独自のダンスを展開しており、全体に既視感のない動画をつくれる仕掛け」(森竹氏)という。
その他、エースコックが大盛りカップ麺の「スーパーカップMAX」のプロモーションで行った「#max衝撃百裂拳」では、オリジナル楽曲と振り付けをつくると共に独自のスタンプを用意。手のひらを前に出す動作に合わせて、テレビCMに出演した笑福亭鶴瓶の顔と商品パッケージが出てくるというもので、「面白動画を手軽に撮れるエフェクトを作り込むと、ユーザーに重宝される」と森竹氏は話す。
これらはいずれもオリジナルダンスや音楽を軸としたハッシュタグチャレンジだが、TikTokのユーザー層が拡大するのに合わせて、今後は別の切り口も増えそうだ。例えば、既に中国では化粧品などのラグジュアリーブランドをはじめ、料理系やガーデニング、教育系といった多彩な企業がハッシュタグチャレンジを展開。「ブランドストーリーを体感できるような仕掛けなど、ダンスだけではないクリエーティブが生まれている。グローバルブランドを中心に他の国でのとがった成功事例を日本でも試したいという声がある」(バイトダンス日本法人の西田真樹副社長)という。
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