19年はより緻密なマーケティング戦略を実践する

18年は苦戦もありましたが、19年は明るい道筋が見えてくるでしょうか。

はい、「白猫」や「黒猫」については、ある程度想定通りに事業展開できるようになったのが、会社として良くなった部分です。後は新作をどうヒットさせていくかですね。『バクモン』に加えて今期(2018年10月~19年9月)はさらに数本投入する予定ですから、しっかり出せれば大丈夫だと思います。

 『アリス・ギア・アイギス』では、ニッチ層に楽しんでいただけるマーケティングがうまく機能し、我々も多くを学びました。ですから19年にリリースする新作は、マーケティングプランをかなり練ります。今やテレビCMを流せば遊んでもらえる時代ではありません。誰がこのゲームを遊んでくれるのか、マーケティング担当者とじっくり話し合い、これまでと違ったマーケティング戦略にしていくでしょう。

そうした緻密なマーケティング戦略を実行されているタイトルはありますか。

開発中の新作RPG『最果てのバベル』は、スーパーファミコンやPlayStationなどで昔からRPGを楽しんでいた人たち向けに、スマホでできるオリジナルRPGを――と位置付けたタイトルです。そうした層を獲得するために、まずはどんな方法が効果的かといったことを深く話し合うようになりました。

『最果てのバベル』 (C) 2018-2019 COLOPL, Inc.
『最果てのバベル』 (C) 2018-2019 COLOPL, Inc.

組織変更で推進する「新しい遊び方の提案」とは何か?

19年3月に、エンターテインメント本部が「エンターテインメント本部」「白猫黒猫本部」「アライアンス本部」に、クリエイティブ本部が「アート本部」「エンジニアリング本部」に改組されました。どういう狙いがあるのでしょうか。

「より迅速な意思決定と効率的なゲーム開発体制の構築を行い、当社の取り組む『新しい遊び方の提案』と『IP 育成』を強化するため」です。コロプラには「白猫」や「黒猫」など、ヒットしたIPがいくつかあります。一方で、「新しいゲームを作っていこう!」という企業姿勢も大切にしています。そうなると、新しいIPを作ることと、ヒットしたIPを育てることのどちらが大事なのかという議論が起こりがちです。部署によって立場や価値観が違いますしね。でも、どちらも大事なんです。ですから今回の組織変更で、両方とも本気で取り組める構造にしました。

 特に主要IPの「白猫」「黒猫」は、10年後も人気IPであり続けたい。それには意識して育てていかなくてはなりません。ある意味、王道のやり方が重要で、奇抜すぎても良くない。そこは組織変更で、これから作る新しいゲームと価値観を分けてやっていくことにしました。

「新しい遊び方の提案」とは具体的にどのようなことを目指すのでしょうか。

先のことなので話せないのですが、かなり変わったゲームを出す計画もあります。テクノロジーに関連した部分が大きいですね。遊び方も、「これ、本当に分かってもらえるのかな」というようなものが控えています。

 『最果てのバベル』も新しい提案の1つです。これまで家庭用ゲーム機でしか遊べなかったようなRPGがスマホで楽しめます。これはスマホでしかゲームをやらない人にとって、新しい体験になるでしょう。「新しい遊び方の提案」を目指すといっても、「この世にないものを作る」という意味だけでありません。「今までスマホでしかゲームをしてこなかった方々に、初めてのゲーム体験をしてもらう」――そういう提案をしていく考えです。

「新しい遊び方の提案」について他にも開発が進んでいると思うのですが、率直な感想はいかがですか。

「おお、これは何だろう?」みたいな、初めての体験はありますね。ただ概念レベルの話ですから、実際にモノとして作ってみないと分かりません。これから先がとても楽しみです。今はスマホゲーム自体に閉塞感もありますから、そろそろ「何だこれは!?」みたいなものを出していかないといけない時期だと思います。

 コロプラは新しいゲームを作り続け、毎回、新しい要素を盛り込む方針でゲームを開発してきましたが、市場が大きくなると、「大体、この辺りが求められるだろう」といった発想で作りがちです。しかし『荒野行動』が出てきて、「思ってもみなかったゲームが、こんな売れ方をするんだ……」と驚かされました。初めて体験する人にとっては、このゲームは完全に新しい遊びなんだということに気づかされましたね。だからこそ、我々も「新しい遊び方の提案」をしっかりと掲げていくことが大事なんです。

今回の組織変更でご自身は「アート本部長」を務められます。何を変えていくつもりでしょうか。

アート本部で狙っているのは「表現力の向上」です。スマホゲーム市場はビジネスが難しくなっており、表現力が高いことも生き残る重要なファクターになっています。その上、海外からレベルの高いグラフィックのゲームが日本に入ってきました。コロプラの表現力はそこそこ高いとはいえ、相対的に優れているとは言えなくなっていますから、意識的にレベルアップを図る考えです。

 キャラクターのアウトプットのレベルだけでなく、時代や作品性に合った良いキャラクターを生み出す能力が大切です。それを高めていきたいし、できる人材を増やしたい。他社のレベルも高いので、このままだと差を付けられてしまう。そんな瀬戸際にいる気がするのです。ですからスタッフには「今までやっていたことは、6割くらい忘れてくれ」と話しています。それくらいの意気込みで、取り組んでいきますよ。

森先 一哲(もりさき かずのり)氏
コロプラ取締役 CCO
コンシューマゲーム業界でデザイナーおよびディレクターとしてさまざまなゲーム開発に携わったのち、2012年3月にコロプラに入社。同年10月にKuma the Bear開発部長に就任し、『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』『白猫プロジェクト』といったスマートフォンアプリのヒットに貢献。14年12月に取締役に就任(現任)後、18年1月COO、19年3月にCCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)に就任。現在に至る

(写真/稲垣純也、写真提供/コロプラ)