eスポーツは地方創生と相性がいい

Shadowverse World Grand Prix 2018では異業種のスポンサーも付きました。eスポーツに対する周囲の反応の変化を感じることはありますか?

変わってきたと思いますね。地方創生の動きが各地で起こっていますが、若年層にアピールしたいという思惑がある企業や団体とeスポーツは相性がいいんです。地域の活性化や仕事を生み出すという観点で言えば、さほど大きなイベントでなくとも、若者を集められれば大きな意味を持ち得ます。例えば、スーパー銭湯みたいなところでeスポーツの大会を開くと、若者が集まると喜ばれるんです。

 大都市で大きな大会を開催し、成功を目指すのも1つの手ですが、大企業が大金を投じて大きな効果を狙うフェーズにはまだ達していません。それよりも、いろいろなeスポーツのミニイベントが地方で盛んに開催されるようになってきたことが、当社にとっては大事ですし、注力しています。

 富山県に「ToyamaGamersDay」というイベントがあるんですよ。これは、最初ごくごく小規模で開催されていたものが、回を重ねて数百人規模の大会に成長しました。地方の新聞社やテレビ局、地元企業などの協力を得ることで、経済圏が成り立っているんです。こういう若い人たちの動きはどんどん増えてほしいですし、協力したいですね。

 この記事をお読みで「『シャドウバース』を通じて地域活性につなげたい」といった方がいれば、ぜひお問い合わせいただきたいと思っています(笑)。

富山県で開催される「ToyamaGamersDay」
富山県で開催される「ToyamaGamersDay」

市場やユーザー層が拡大した実感はありますか?

女性が増えました。ゲームのプレーを見て楽しむ人は、女性が多い印象ですね。話をうかがってみると「お兄ちゃんがプレーするのを見ていた」といった人が多いんです。「自分ではあまりハードなプレーはしなくとも見るのは好き」といった層は取り込めていますね。

 女性プレーヤーも多いですよ。最近は、FPS(First Person Shooting、主人公視点でプレーするシューティングゲーム)のようなジャンルでも、女性が増えていると聞きますが、もともとスマホゲームは女性のプレーヤー比率が高いんです。そのためか、eスポーツとして楽しむ女性プレーヤーの比率も『シャドウバース』は高いですね。クイーンズカップという女性限定の大会では300人弱が集まりました。女性のみを対象としたゲーム大会としては日本ではかなり大きな規模だったんじゃないでしょうか。

女性限定の大会を開催するきっかけは何だったのでしょう?

女性が増えてきたとは言っても、まだまだ男性のほうが多いのが実情です。女性限定とすることで参加者同士での会話がしやすい雰囲気が生まれるなど、“ならでは”の楽しさがあるんです。優勝したプレーヤーがテレビにも出演したりと手応えを感じているので、19年も開催できればと思っています。

今年は「シャドウバースの年」になる

19年も『シャドウバース』は18年と同規模の大会を開催するとうかがいました。

優勝金額100万ドルの世界大会は19年も12月に開きます。それだけでなく、19年は『シャドウバース』のさらなるユーザー層拡大を考えています。6月に3周年を迎えますが、スマホで楽しむeスポーツとしてようやく基盤が整ってきた感がありますし、プロリーグも2年目を迎えて多くの固定ファンを抱えるスター選手が出てきました。「他のIP(ゲームなどの知的財産)に比べて、スター選手が生まれるまでの時間がとても短い」と言ってくださる方もいます。プロリーグがそれに一役買っているのでしょう。この流れをきちんと生かしていきたいですね。

賞金金額の高さばかりが取り沙汰されますが、『シャドウバース』の大会は中身が伴っている印象です。

大事なのは“ちゃんとやること”。今のeスポーツはまだまだうさんくさいものと取られかねません。まじめに大会を一つひとつ成功させていくことが信頼を生み、観客として見るに値するものだと思われるようになるはずです。

 選手たちも初めて「プロ」という肩書きを得た当時は戸惑いもあったようですが、私たちCygamesともども成長してプロになることができてきたのが、18年から19年にかけてです。

選手だけでなく、大会運営者としてのCygamesも成長し、共に「プロとはこういうものだ」という規範を作り上げている感じですね。

見本や手本となる人や組織がほとんどない状態からのスタートでしたからね。若い人がプロとして人前に出て危うい言動をしたりすることもありますが、そういう経験をしながらプロになっていく。それが今起きていることです。

eスポーツやファン層拡大の取り組みなど、『シャドウバース』の勢いはまだ続きそうですね。

18年は「Cygamesの年」と言いましたが、「19年は『シャドウバース』の年」になりますよ(笑)。

木村 唯人(きむら・ゆいと)氏
Cygames専務取締役。東京大学大学院卒業後、カナデン、シリコンスタジオを経て、2011年、渡邊耕一代表とともに創立メンバーとしてCygamesに参加。『神撃のバハムート』や『グランブルーファンタジー』『シャドウバース』『プリンセスコネクト!Re:Dive』などのプロデューサーを務め、2019年5月より現職。運営中のタイトル以外に、今後リリース予定の新作のプロデューサーも担当するなど、経営と並行して、ゲーム開発にも深く携わっている

(写真/志田彩香)