7周年を迎えた『パズル&ドラゴンズ』。eスポーツへの展開や休眠ユーザーの復活や若年層の取り込みなど、2018年は同ゲームのさらなる活性化に積極的に挑戦した。新作の開発では「グローバルファースト」を目指すという同社の今後の取り組みなどを森下社長に聞いた。

ガンホー・オンライン・エンターテイメントの森下一喜代表取締役社長 CEO
ガンホー・オンライン・エンターテイメントの森下一喜代表取締役社長 CEO

休眠ユーザーの復活と若年層の開拓に手応え

2018年を振り返って、ガンホー・オンライン・エンターテイメント(以下、ガンホー)にとってどのような1年でしたか?

『パズル&ドラゴンズ(以下、パズドラ)』では、2018年に限らずですが、休眠ユーザーの復活やアクティブユーザーのさらなる活性化という普遍的とも言えるテーマに取り組みました。加えて、『パズドラ』はすでにリリースされて丸7年になることから、若年層を含む新しい世代の取り込みも必要になります。

『パズル&ドラゴンズ』(C) GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved.
『パズル&ドラゴンズ』(C) GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved.

 テレビCMの効果などから『パズドラ』という名前だけは若年層にも浸透しているのですが、実際に遊んでもらうにはまず「ゲーム性」を理解してもらう必要があります。そこで、2018年4月から「パズドラ」という名前でeスポーツ、プロゲーマーの世界を描いたアニメを放映しました。

ゲーム内のファンタジー世界で起こった出来事でなく、ゲームを俯瞰(ふかん)したeスポーツを作品の切り口にしたのはなぜですか?

ゲーム性を伝えるのが理由です。これより前の『パズドラ』をテーマにした作品はゲーム内で描かれた世界観に沿った創作の物語でした。この場合難しいのは、ドロップを動かしてコンボを作るというゲーム性の核となる「パズルアクション」を作品と直結させることでした。eスポーツを切り口にすることで『パズドラ』をそのままゲームとして描くことができ、ゲーム性をダイレクトに伝えることができました。実は原案の企画とシナリオは僕が書いています。

ゲームをゲームとして描く手法は確かにゲーム自体の魅力を伝えるには効果的でしょうね。

これはかなり効果があって、小学生を中心とした若年層を大きく掘り起こせた実感があります。弊社主催のイベントにも小学生にかなり来ていただけるようになりました。

 こうした若年層のユーザーは、たとえ今はプレーしていただけなくても、将来的なユーザーになる可能性を秘めています。でもイベントの参加者を見ていると、実数が増えているだけでなくプレーの技術も目を見張るほど向上していますね。

テレビアニメ「パズドラ」(C)ガンホー・オンライン・エンターテイメント/パズドラプロジェクト2019・テレビ東京
テレビアニメ「パズドラ」(C)ガンホー・オンライン・エンターテイメント/パズドラプロジェクト2019・テレビ東京

2018年は「eスポーツ元年」と言われ、タイミング的にもよかったのではないでしょうか?

「eスポーツ」という単語がようやく大人に浸透して来た感がありますが、子供にはまだピンと来ていないところがあります。だからアニメとして描いたわけです。

もう一方、休眠ユーザーへのアプローチはどういったものがあったのでしょう?

休眠ユーザーの復活に関しては、ゲーム内のアップデートなどの施策により、かなり手応えを感じました。

 ただ、一口に復活と言っても、それぞれのユーザーのレベルやスキルによって有効な施策は違います。単純に「魔法石を配る」といったことをやるだけでなく、広範なユーザー事情に対して全包囲的にリーチする施策にいろいろとトライしました。そうしたものが7周年に向けた「大感謝祭」として結実したと思います。

eスポーツ大会では経験則で磨き上げた演出に自信

アニメでもeスポーツを切り口にされていますが、19年から『パズドラ』のプロリーグも始動しています。その手応えはどうでしょう?

『ラグナロクオンライン』では04年くらいから協賛を集めてジャパンカップ、ワールドチャンピオンズカップと大きな大会を開催していますし、『パズドラ』の大会ももう第6回を数えています。ですから、僕らにとっては18年がスタートというわけではありません。ただ、「eスポーツ」という言葉が認知され、メディアの扱いが変わってきた感覚はあります。

「パズドラプロリーグ2019」の様子
「パズドラプロリーグ2019」の様子

 いち早く取り組んでいたからこそ、現状にもどかしい思いを人一倍感じてもいます。会場に詰めかけた何万というお客さんの熱気を外、いわゆる“世間”にまだまだ伝え切れていません。ゲームをする大会をeスポーツと呼ぶという表面的な話が認知されるだけでも大きな前進ですが、それだけでなく多くの人を熱中させる魅力をeスポーツは持っていると広く知ってほしいですね。

『ラグナロクオンライン』の大会を始められた頃の会場はどんな雰囲気だったのでしょう?

最初のうちは、イベントのメインプログラムとして決勝戦を開催しても、ステージの上から見るとお客さんの少なさに悲しくなるような状況でした。大会以外、つまり、新タイトルの発表とか、オリジナルグッズの販売などはもちろん大人気で、入場制限が必要なくらいに来場者がいらっしゃるんですよ。でもメインイベントである大会の決勝戦のときにはみんな帰ってしまうんです。

それでも続けられたわけですね。

なかば意地で続けてきました。すると、入場規制がかかるくらいまでのイベントとして浸透しました。そうして得たノウハウがありましたから、『パズドラ』の大会ではそこが生かされたと思います。

 思えば最初のころはゲームの大会というと「どんなことをするんですか?」といった質問が出るくらいでしたけど、今では「eスポーツ」と言えば「競技としてゲームで腕を競うもの」とすぐに理解してくれるようになったわけですから、大きな進歩です。まだまだ課題は山とある状況とはいえ、弊社だけでなく、eスポーツに関わる団体や企業をはじめ、多くの人たちの努力が実を結んでいるのが今の状況ですから、喜ばしいことと言えるんじゃないでしょうか。

『ラグナロクオンライン』から『パズドラ』を通じて得た大会運営のノウハウにはどんなものがあるのでしょうか?

何よりも選手を知ってもらう工夫ですね。格闘技の大会でもそうですが、選手がどんな人か分からないと、誰を応援していいのか分かりません。そこでプレーヤーの1人ひとりを地方まで追って、どんな人かが理解できるような映像を撮影しました。「この人はこういうキャラクター性の選手なんだ」と浸透させ、そのうえで大会を見てもらう。カメラワークにしても、ゲーム画面だけでなく、選手の顔、悩みや喜びといった表情も含めてちゃんと見せていくことが大切です。

『妖怪ウォッチ ワールド』はより多くの方に遊んでもらうことが課題

18年6月に『妖怪ウォッチ ワールド』がリリースされました。これらについてはいかがでしたか?

『妖怪ウォッチ ワールド』はレベルファイブさんとのコラボで生まれたタイトルですが、こういう他社との取り組みはうちとしては初の試みでした。位置情報ゲームと言いながらも歩かなくていいゲームになっています。『パズドラレーダー』の技術的な基盤を活用しています。

 『妖怪ウォッチ ワールド』は、『パズドラ』で「妖怪ウォッチ」とコラボをさせてくださいとお話をしたときに、日野さん(日野晃博氏:レベルファイブ代表取締役社長)から「コラボだけでなく、他にももっと大きな枠組みで何かやりましょう」と言っていただき、「妖怪ウォッチ ワールド」のベースとなるアイデアをお話ししました。

『妖怪ウォッチ ワールド』(C)GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved. (C)LEVEL-5 Inc.
『妖怪ウォッチ ワールド』(C)GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved. (C)LEVEL-5 Inc.

企画のどんな部分に妖怪がハマると感じられたのでしょうか?

『妖怪ウォッチ ワールド』のコンセプトは「歩かない位置情報ゲーム」です。人に妖怪を取りつかせて、その人が移動した場所を知ることで、自分がそこへ行った気になれる。ただ、企画当初は社内の人間からは「こんなの誰がやるんですか?」とだいぶ非難されました。

 実は『パズドラ』のときも、「いい」と賛同してくれたのは10人中1人でした。「今の時代、こういうのが流行るんですかね?」とか散々でしたから。いまだに反対した社員の顔は全員覚えています(笑)

『妖怪ウォッチ ワールド』は実際に幅広い層に受けていますね。

特に女性からの支持が高いですね。それと、スマートフォンでなくともWi-Fi環境さえあればiPadのようなタブレット端末でも楽しめますから、小学生のユーザーも多いです。

 このゲームの場合、例えばお父さんに取りつかせて職場に「妖怪の木」を植えれば、そこを中継点にいろんな人に憑依(ひょうい)させることができ、より広い範囲の土地にいる妖怪を友達にできます。遠出が難しい小学生でも、工夫次第で自分は家から出ずにゲームを進めることができるわけです。

タイトルとして順調に育っている感じですね。

決して爆発的にヒットしているとは言えませんが、着実にアクティブなユーザー数を伸ばしていますね。ただ、『妖怪ウォッチ ワールド』はユーザーの年齢層も影響し、あまり売り上げに直結しない部分もあります。より多くの方に遊んでもらえるよう、やはりそこを伸ばすという課題は抱えています。

今後は「グローバルファースト」な展開を

今後という話でいくと、19年春にマルチプレーヤーニンジャガムアクション『Ninjala(ニンジャラ)』というタイトルを予定されています。

最初は18年のE3、その後、PAXと米国で発表させてもらい、その後に東京ゲームショウでの出展となったのですが、どのイベントでも2時間半待ちの行列ができるくらいに好評でした。

『Ninjala(ニンジャラ)』(C)GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved.
『Ninjala(ニンジャラ)』(C)GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved.

 武器をクラフトしたり、素早く移動したりと、ゲーム内のさまざまなことにチューイングガムを活用するアクションゲームなのですが、1回目で操作感を覚え、2回目で練習、3回目が本番と、試遊では3回プレーしてもらうようにしていました。長い待ち時間でも試遊を終えた来場者がみんな笑っていたので、手応えを感じました。

海外でも手応えが得られているこの『Ninjala』が海外戦略の核になるのでしょうか?

海外戦略というよりも、「グローバルファースト」です。どうしても今までは「まずゲームとして完成させること」を目標に「ジャパンファースト」になっていました。北米や欧州でも同時に出すというのが我々としてもベストですし、「成功したらアメリカ」という考え方を変えていくつもりでいます。実際に『LET IT DIE』は「北米・欧州ファースト」のつもりで作りましたし、500万ダウンロードのうち日本のユーザーは10万人弱。残りの490万以上のほとんどが米国のユーザーでした。

現在は新作パイプラインとして8本が稼働しているとのことですが、どんなジャンルのゲームが予定されているのでしょう?

アクションゲームもあれば、いろいろ取りそろえています。既存のジャンルに捕らわれない、かなり斬新なものも含まれているのですが新しすぎて、市場に理解されないんじゃないかと危惧しています(笑)。やっぱりゲームに限らず商品って早すぎてもダメ、遅すぎてもダメなんですよね。うちは早すぎるものが多いので、そこは注意したいところです。

森下一喜(もりした かずき)氏
1973年生まれ。 2002年ガンホー・オンライン・エンターテイメントを創業。「ラグナロクオンライン」を日本でプロデュースし、2012年『パズル&ドラゴンズ(パズドラ)』の企画を手掛け、パズドラシリーズ エグゼクティブプロデューサーを務める。代表作は『パズル&ドラゴンズ』シリーズ、『ラグナロクオンライン』、『LET IT DIE』など

(写真/中村宏、写真提供/ガンホー・オンライン・エンターテイメント)