「さらに上を目指せるのではないか?」

デジタル配信が加速することによって、ユーザーの属性を詳しく把握することは可能なのでしょうか。

一部は可能ですが、まだまだですね。ただユーザー属性の把握は必要なので、今、それを収集しようとしています。『モンスターハンター:ワールド』ではユーザーの年齢層、購入した国名といったデータを幅広く収集しました。母数が数万本と少ない国であっても、全部収集するようにしました。こうして得た属性データから、新たに若いユーザーが「モンスターハンター」に入ってきたことが分かりました。これが『モンスターハンター:ワールド』の大きな成功要因だと思います。

 「モンスターハンター」シリーズは誕生してから今年で15年になります。当時15歳だった人が30歳、20歳だった人が35歳になっているわけです。当初からのユーザーはもちろん大切にしていかなくてはなりませんが、私は若いエントリーユーザーをどう取り込むかが「モンスターハンター」のブランディングにとって重要だと言い続けてきました。その際、日本では義務教育が終わってアルバイトができるようになったり、親もある程度お金や裁量を与えたりする子供たちをエントリーユーザーとして捉えるべきで、それが15歳くらいだと考えています。『モンスターハンター:ワールド』では、そうした年齢層のユーザーを世界レベルで獲得できました。

販売本数ですが、初めて「1000万本」という数字を超えて何か変化したことはありましたか。今までとは違った“風景”が見えてきたとか……。

出荷本数と販売本数に大きな乖離(かいり)はありませんので、「1000万人」のユーザーが購入してくれたということになります。これは会社全体としては“勇気”になります。しかし、甘えていてはいけません。2000万本以上売れているタイトルも世界には存在していますから、「我々もさらに上を目指せるのではないか?」と社内を鼓舞しています。

 世界人口が約76億人で、40億人がネットに接続されています。そのうち20億人が何らかの形でゲームで遊んでいる。そう考えると、全世界で見たとき今回の1000万本という数字がいかに少ないか。さらに先を見据えれば、移動通信システムが5Gになればゲームの配信環境はより改善されます。インフラがリッチになり、ゲームのストリーミング配信も普及すれば、いろいろなデバイスを経由しても同じセーブデータのゲームを楽しめるようになります。しかもどこでも遊べるのですから、ゲーム人口はもっと増えるでしょう。

 カプコンが進めてきたデジタル戦略の正しさが確信に変わったので、これからは概念を大きく変えていこうと言っています。「今までこうだった……」のように、過去の経験に依存するのではなく、新しい仕組みのゲームビジネスにチャレンジしていきたいですね。

(次回、カプコンの「eスポーツ展開」に続く)

辻本春弘(つじもと はるひろ)氏
カプコン 代表取締役社長 最高執行責任者(COO)。1964年、大阪府生まれ。大学在学中よりアルバイトとしてカプコンで働き始め、機器の修理などの現場業務の経験を積む。1987年、大学卒業と同時にカプコンに入社。当時の新規事業だったアミューズメント施設運営事業の立ち上げに参加し、業界ナンバーワンの高収益ビジネスモデルの確立に貢献。1997年には取締役に就任し、以後は家庭用ゲームソフト事業の強化に注力。常務取締役(1999年~)、専務取締役(2001年~)を経て、2004年からは全社的構造改革の執行責任者として、コンシューマ用ゲームソフト事業の組織改革(開発・営業・マーケティングを一体化した組織への改革)、海外事業の拡大などに携わる。2006年に副社長執行役員となり事業全体を統括。2007年7月には創業者である父・辻本憲三(現、代表取締役会長最高経営責任者)から社長職を引き継ぎ、代表取締役社長 最高執行責任者(COO)に就任し、現在に至る

(写真/稲垣純也、写真提供/カプコン)