アパレルのサブスクリプションサービスは、ベンチャーを中心に市場がいち早く立ち上がった分野。ここにスーツレンタルで挑むのがレナウンだ。同様のサービスからAOKIが開始半年で撤退を決めるなど、難易度が高い。だが、同じスーツレンタルでもサービス設計思想は大きく異なる。両サービス間の3つの違いを解説しよう。
レナウンは2019年2月8日から、月額制スーツレンタルサービス「着ルダケ」にクールビズに対応した新プランを追加する。「スタートアッププラン/クールビズ」プランは春夏シーズンはスラックス5本、秋冬シーズンはスーツ2着を貸し出す。「エンタープライズプラン/クールビズ」は春夏シーズンにスーツ1着とスラックス5本、秋冬シーズンにスーツ3着を貸し出す。2つのクールビズプランは、春夏シーズンは上着を着ないという、顧客のニーズに応えるために開発した。
「顧客のダイレクトな声が得られることが利点。これまでの顧客の声といえば、お客様相談室に寄せられるクレームぐらいしかなかった。顧客中心を外すと、この事業は続かないと考えている」。レナウンのダーバン戦略事業部企画商品部UXユニットの東村昌泰ユニットマネージャーは、新プラン開発背景をこう説明する。顧客中心主義で改善を積み重ねて、「圧倒的利便性」のあるサービスを開発する。それがレナウンの目指す、サブスク事業の提供価値だ。サービスを18年7月に開始し、会員数は18年11月までの獲得目標を2カ月前倒しで達成するなど、順調に伸びているという。22年までに1万人の会員獲得を目指す。
着ルダケ開始当初、スーツのサブスクリプションサービスではAOKIホールディングスの「suitsbox」が先行しており、その後追いサービスとして見られた。しかし、同じスーツのサブスクリプションでも、サービス設計は大きく異なる。大きく3点ある違いを知ることで、AOKIがサービスを継続できなかったスーツのサブスクに、レナウンが挑める理由が浮かび上がってくる。
ニーズに応え、新品にこだわり
まず、決定的に異なるのが商品だ。レナウンの着ルダケは利用者一人ひとりにの体型に合わせて、新品のスーツを提供するセミオーダー式を取っている。色は黒、紺、グレーの3色を用意し、ピンストライプやシャドウストライプなどの柄もそろえた。サイズはスーツの既製サイズ16体形に対応。股下は採寸結果に合わせて裾上げする。ネットで申し込む場合は、自身で股下を測定して申込時に入力する。不安な場合でも、東京・有明のレナウン本社にあるショールームで試着と採寸をできる。加えて試験的に東京・丸の内の直営店でも採寸を受け付け始めている。「人員が整っていないため、大々的に告知はしていないが、今後、既存の店舗網を生かしたリアルの接点は増やしていきたい」と東村氏は言う。
また、ウエストは前後6cmであれば、アジャスターで調整可能な設計になっている。「スーツのサブスクは、おそらく体形の極端な変化が解約の理由になる」(東村氏)という予測から、多少の体形の変化にも対応できるような作りにした。
レナウンが新品にこだわったのは顧客の声を重視したからだ。サービス開発に先駆けて消費者にアンケートを取ったところ、回答者の6割が「他人と洋服を共有したくない」と答えたという。「男性はズボンなど、肌に直接当たる洋服の共有に不快感を示す人が多かった」(東村氏)。返却されたスーツはレナウンがクリーニング後に保管して、翌年の同シーズンに利用してもらう。また利用期間2年ごとにスーツを新品と交換できる。解約された場合は、状態の良い品を中古として二次流通で販売する。
月額制高級バッグレンタルの「ラクサス」や、ファッションレンタルの「エアクローゼット」など、アパレルレンタルはシェアリング型のサービスが多い。AOKIのsuitsboxもあらかじめ用意したスーツを、会員間で共有して利用するシェアリング型だった。ファッションのシェアリング型は対象商品によって許容度が異なる。その点を見誤らないことが、アパレルのサブスクの設計で重要になりそうだ。
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