トヨタ自動車が参入を発表していた、サブスクリプションサービス「KINTO(キント)」の詳細が明らかになった。2月から東京でトライアルから始め、全国展開も視野に入れる。トヨタが表明し続けているモビリティカンパニーへと向かう足掛かりとなるのか。
必要な時にすぐ乗れ、思うままに移動できる──。「筋斗雲」の世界観をイメージしたKINTOは、トヨタの新車が月額料金で乗れるサービス。2月5日、その内容が発表され、プランは「KINTO ONE」「KINTO SELECT」の2種類が用意された。
ONEでは、「プリウス」「カローラスポーツ」「アルファード」「ヴェルファイア」「クラウン」の5車種から1車種を選んで3年間乗り続ける。月額料金はグレードやオプションによって異なり、例えば、プリウスでは月額4万9788~5万9832円(税込み。以下同)。クラウンなら9万7200~10万6920円となる。
一方、SELECTは高級車「レクサス」専用のサービスで、「ES300h」や「IS300h」などの6車種を6カ月ごとに乗り換え、3年間利用するというスタイルだ。月額料金は19万4400円となる。
料金設定はコストを積み上げて算出したといい、対人・対物無制限の任意保険や自動車税、登録諸費用が含まれる。利用者は駐車場とガソリン代を負担すればいい仕組みを用意したい考えだ。
また、仮に3年経たずに解約した場合、例えばONEを6カ月単位で契約したのであれば、残りの未払い分と5カ月分の追加清算金が必要(追加清算金は契約単位で異なる。また一部理由で解約コストが免除される場合も)。
SELECTは2月6日から、ONEは3月1日から、いずれも東京都内の販売店(一部を除く)で試験的にサービスを始める。その後、夏以降に全国展開し、秋からはONEの対象車種を拡大する計画だ。
サービス開始に当たり、トヨタは1月11日、サービス名と同じくKINTOという事業会社を設立した。トヨタファイナンシャルサービスが66.6%、住友商事グループの住友三井オートサービスが33.4%を出資し、両社の共同事業で運営する。
先手を打ち、まずはやってみる
KINTOの社長に就任した小寺信也氏(トヨタファイナンシャルサービス上級副社長)は、「石橋をたたいて渡るという、従来のトヨタのやり方では通用しなくなった。不透明な将来に向けて先手を打ちたかった」と語る。
クルマの所有から利活用へという「ユーザーの変化」、IT企業やリース会社がモビリティサービスを自ら提供するなど「競合の変化」、ビジネスモデルが限界を迎えた「トヨタの変化」──。これらを受け、多様化するクルマの利用形態に対応した新たなビジネスモデルの構築が急務と判断した。
事業化に向けては、スピードを何よりも重視し、「スタートアップ企業なら、どうやるかと意識しながら進めてきた」(小寺社長)。結果、従来のように、すべて自前で賄うのではなく、あえてパートナーと手を組むことで、構想から1年でサービスインに持ち込んだ。
パートナーを組む住友三井オートサービスは、法人リースの分野で実績があり、その運営ノウハウやシステムをKINTOに生かす。住友三井側にとっても「法人向けリースが中心で、個人向けのリースサービスを伸ばしたかった」(住友三井オートサービス常務執行役員営業推進本部長の小熊浩氏)。いわば、弱点を補い合う形で、連携がスタートした。
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