プレゼンテーションは時間の枠が決まっているものだ。持ち時間が長いとプレッシャーがかかるが、逆に極端に短い場合も伝えるべき情報の取捨選択に苦労する。森永乳業「トリプルヨーグルト」のプレゼンはわずか十数分だったという。限られた時間に伝えるポイントを詰め込むための工夫を聞いた。

累計販売数1億個を突破した森永乳業「トリプルヨーグルト」。そのヒットには工夫を凝らしたプレゼンテーションも一役買っている
累計販売数1億個を突破した森永乳業「トリプルヨーグルト」。そのヒットには工夫を凝らしたプレゼンテーションも一役買っている

 2019年4月に発売された森永乳業「トリプルヨーグルト」は、血圧、血糖値、中性脂肪に関する3つの機能性を表示した製品だ。発売後1年で見ると従来の機能性表示食品ではなかった従来製品と比べ、トリプルヨーグルトは300%を超えるヒットとなっている。

 かつて機能性を製品パッケージに表示できるのは、国の審査が必須の特定保健用食品(トクホ)に限られていたが、15年に機能性表示食品制度が施行された。機能性表示食品制度とはメーカーが安全性と科学的根拠について責任を持ち、消費者庁長官に届け出れば機能性を表示することが可能になる制度だ。トリプルヨーグルトも「機能性表示食品」の1つ。パッケージでは「高めの血圧(収縮期血圧)を下げる」「食後の血糖値の上昇をおだやかにする」「食後の中性脂肪の上昇をおだやかにする」という3つの機能性をマゼンタ(ピンク)、シアン(青)、オレンジの3色で示している。

 ここで取り上げるのは、トリプルヨーグルト発売に向けた報道向け発表会のプレゼンテーション資料だ。この発表会では複数の新製品をまとめて紹介していた。トリプルヨーグルトは目玉商品の1つだったが、製品ごとの持ち時間が限られていた。「プレゼンの時間は10~15分ほどだった」と、森永乳業 営業本部 マーケティング統括部 マーケティング開発部 デザート&ヨーグルトマーケティンググループの益田多美マネージャーは振り返る。

 十数分という短い時間で製品に込めた思いを益田氏はどう伝えたのか、スライドをじっくり見ていこう。

森永乳業 営業本部 マーケティング統括部 マーケティング開発部 デザート&ヨーグルトマーケティンググループの益田多美マネージャー。オンライン会議で話を聞いた
森永乳業 営業本部 マーケティング統括部 マーケティング開発部 デザート&ヨーグルトマーケティンググループの益田多美マネージャー。オンライン会議で話を聞いた

1枚1分程度のスライドでポイントを示す工夫

 新製品のプレゼンは、開発に至る背景を理解してもらうために市場全体を俯瞰(ふかん)するデータを示すのが定石だ。トリプルヨーグルトのプレゼンも、その定石を踏んでいる。ヨーグルトの市場規模は14年から16年にかけて順調に伸びていたが、トリプルヨーグルトが発売された19年は、機能性商品の成長が鈍化する見通しだった。だからこそ新たな価値を生む新製品の投入が必要だったわけだ。

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