今売れている商品だけ作っていれば良い――。そんな現状維持のマインドを打開し、一歩を踏み出さなければ新たなヒット商品は生まれない。今回は、伝統的な商品を扱ってきた食品メーカーが、新機軸を切り開いたプレゼンテーション資料を紹介しよう。

「混ぜ込み 悪魔めし」はSNSなどで話題となった「悪魔のおにぎり」をヒントに開発された混ぜ込みタイプのふりかけだ。製品の企画時、ネーミングには社内で賛否があったが消費者の多くは好感を持った
「混ぜ込み 悪魔めし」はSNSなどで話題となった「悪魔のおにぎり」をヒントに開発された混ぜ込みタイプのふりかけだ。製品の企画時、ネーミングには社内で賛否があったが消費者の多くは好感を持った

 10月下旬のハロウィーン時期にはスーパーなど小売店で関連商品が並ぶ。通常はシーズンが終わると、それら商品は店頭から消えていくが、黒い翼が付いたオバケ風のキャラクターとオレンジ色のパッケージで、年間を通して売れ続けている商品がある。味付けのりやふりかけなどの総合食品メーカー、浜乙女(名古屋市)が2019年8月に発売した「混ぜ込み 悪魔めし」だ。

 「あるテレビ番組で南極地域観測隊の調理隊員が『悪魔のおにぎり』と呼ばれる夜食を作ったエピソードが紹介され、それが開発のきっかけになった」と浜乙女 商品開発部 販売促進担当の伊藤千夏氏は言う。番組をきっかけに「悪魔のおにぎり」がSNSで話題になり、インターネット上にはレシピが数多く登場。伊藤氏は「健康ブームの反動が来ている」とにらんだ。

浜乙女 商品開発部 販売促進担当の伊藤千夏氏。Zoomのオンライン会議で話を聞いた
浜乙女 商品開発部 販売促進担当の伊藤千夏氏。Zoomのオンライン会議で話を聞いた

 「混ぜ込み 悪魔めし」には天かす、天つゆの顆粒(かりゅう)、青のり、青じそが入っている。ご飯に混ぜ込んで握るだけで「悪魔のおにぎり」が作れるということで人気に火が付き、発売から1年間で400万袋が売れた。伊藤氏によれば「ふりかけでここまでドンと売れたのは初めて」とのことだ。

 今回紹介するのは「混ぜ込み 悪魔めし」発売の半年ほど前に社内で開催された会議で使用された企画書だ。この企画書は全7ページという短いもので、プレゼンテーションの時間は15分程度、試食を含めても30分程度だったという。スライド全体のデザインは赤をアクセントにし、全体的にはっきりしたカラーが特徴だが、これは伊藤氏の上司の好みとのこと。確かに、15分程度の短いプレゼンなら、強い色合いでズバッと伝えるのも良い手だ。

罪悪感を打ち負かす悪魔的なおいしさをアピール

 浜乙女は総合食品メーカーとしては中堅どころで、ふりかけの他には味付けのりやお茶漬けなどを製造している。

 浜乙女が主力としてきたのは、そうした昔からある、健康的で、目立たないながらも地道に売れ続ける商品だ。その一方で「競合メーカーも出しているような定番商品ばかりでなく、もっと個性を出していかなければ……」という声も社内から上がっていた。

混ぜ込み商品のブランドにこだわりのある人は少ない。また、混ぜ込み商品に“健康”を求めている人は比較的少なかった
混ぜ込み商品のブランドにこだわりのある人は少ない。また、混ぜ込み商品に“健康”を求めている人は比較的少なかった

 伝統の味や健康志向にこだわるばかりではなく、新たなニーズを開拓すべきだという意見を伝える情報が1枚目のスライドにある。「混ぜ込み 悪魔めし」のような「混ぜ込み商品」を週に1回以上食べる、自分で購入する人へのアンケート結果だ。そうした人たちの場合、購入する商品を事前に決めている人は少なく、売り場を見てから購入する商品を決める人が約8割に上っていた。これは、売り場に置いてインパクトのある商品なら手に取ってもらいやすくなるということでもある。

 また「健康に良さそうな商品を買う」人は、それほど多くなかった。混ぜ込み商品にとって「健康に良い」は決め手となる可能性が低いわけだ。

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