新たな製品やサービスを生み出すときには、多くの人々とプレゼンテーションや議論を通して形にしていく。今回はデザイナーの視点から製品開発を捉えたスライドを紹介する。「癒やしを与えるロボット」という、かつてない製品の開発に挑戦するデザイナーの情熱や意気込みが伝わってくる資料だ。

癒やしを与えるロボット「LOVOT(らぼっと)」。かわいい見た目の裏には計算しつくされたデザインがあった
癒やしを与えるロボット「LOVOT(らぼっと)」。かわいい見た目の裏には計算しつくされたデザインがあった
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人の顔を認識して懐くLOVOTが人の心を癒やす

 ペット型ロボットといえばソニーの「aibo(アイボ)」を思い浮かべる人が多いかもしれないが、犬型のaiboとは違う新しい家族型ロボットの姿を追求したのが「LOVOT(らぼっと)」だ。このロボットは人の顔を認識し、愛情を注いでくれた人に懐くAI(人工知能)を搭載する。かわいがってくれる人を見つけると近づいてきて“抱っこ”をせがむのだ。

 人は、ペットを抱くと神経伝達物質が脳内に分泌され、幸せな気持ちになるといわれている。LOVOTはまさにそんな幸福感を得るために開発されたロボットで、抱きかかえるとCPU(中央演算処理装置)の廃熱を利用したぬくもりも伝わってくる。

 LOVOTを開発したのはスタートアップのGROOVE X(グルーブエックス、東京・中央)。代表の林要氏は、トヨタ自動車でF1の空力開発スタッフ、量産車の開発マネジメントなどを経験し、ソフトバンクロボティクスでは人型ロボット「Pepper(ペッパー)」の開発に携わった人物だ。

 LOVOTのデザインを担当したznug design(ツナグ・デザイン、東京・杉並)の根津孝太氏は、林氏と同じトヨタ自動車の出身。林氏からLOVOTの話を聞いた根津氏は「初回の打ち合わせで自分から『デザイナーは私に決めてください』と伝えた」と言う。

znug designの根津孝太氏。布製の電気自動車「rimOnO(リモノ)」をデザインしたことでも知られている
znug designの根津孝太氏。布製の電気自動車「rimOnO(リモノ)」をデザインしたことでも知られている
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 「家族を亡くした孤独な人、ペットロスに苦しんでいる人、そうした人のために抱っこしてもらうロボットの開発に全力を注ぐ」という林氏の言葉に衝撃を受けたという。そんな根津氏が手掛けたLOVOTのプレゼン資料を3つ紹介していこう。

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