スタートアップが起業する際は投資家の出資を募ることがある。プレゼンテーションで彼らを説得できるかで、第一歩を踏み出せるかが決まる。今回は、あるスタートアップが資金調達の際に作った緊張感あふれるプレゼン資料を紹介しよう。社内事業を立ち上げる際の参考にもなるはずだ。
糖質制限ダイエット用の冷凍食品を提供する「ゴーフード」という宅配サービスをご存じだろうか。2020年2月に始まったサービスで、定期購入と都度購入があり、価格は1食あたり548円(税別、定期10食セットのSサイズ)から。今回は、19年7月にゴーフード(東京・港)を創業した岡広樹CEO(最高経営責任者)が、投資家の出資を募る際に使ったプレゼンテーション資料を見せてもらった。
岡氏は、これまで数多くの事業を成功させている連続起業家だ。09年に通信関連の販売事業で起業して以来、さまざまなビジネスを手掛け、アパレル事業、ボイストレーニング事業、セールス支援事業などを次々と軌道に乗せては売却してきた。今回のゴーフードは、岡氏自身が持っていた食へのこだわりを形にしたものだ。
中学・高校・社会人で100メートル走の選手だった岡氏は「自分の体づくりや食には強い関心があり、ダイエットにも有効な低糖質の商品を提供したいと思った」と語る。Uber Eats(ウーバーイーツ)をはじめとする食事の宅配サービスが日本でも普及し、ダイエット食も可能性があるとみた岡氏だが、食事をそのまま届けるためには日本中に店舗が必要になる。それはコスト面で難しいので、冷凍食品として全国展開することにしたという。
投資家の出資を引き出す3つのポイント
ゴーフード設立後、岡氏は投資家たちに向けて事業計画書を作成した。その際、彼らに納得してもらうために岡氏が気を付けたポイントは「ミッション(使命)」「ビジョン(展望)」「バリュー(価値)」の3つだ。
「この3つは、根幹の部分から事業がうまくいくことを伝えるために絶対に欠かせない」と岡氏。事業計画書の表紙をめくるといきなり「ミッション」と「ビジョン」の文字が目に飛び込んでくる。
「ミッション」と「ビジョン」に続く、3枚目のスライドはアジェンダ(目次)。このスライドの「3. 事業性分析」の部分で3つ目のポイント「バリュー」について語るのだ。「作りながらプレゼンの構成を考えた」と岡氏が言う目次には、いくつもの企業を立ち上げ、知見を積み上げてきた岡氏のノウハウが詰まっている。
ネガティブなポイントもしっかり伝える
岡氏は「3. 事業性分析」にある「市場分析」で、国内に約1.7兆円、グローバルではその30倍の食品EC(電子商取引)市場があることを示した。日本の人口が減少傾向にあるという投資家の懸念を、海外市場も視野に入れていると伝えることで払拭するわけだ。「海外での事業展開は簡単ではないが、日本の食にはブランド力があるので十分に戦えると考えている」と岡氏。
この記事は会員限定(無料)です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー