サッポロビールと言えば金色の星を想起する人も多いだろう。ビール売り場でも一目で分かる意匠だ。今回紹介する第三のビールは、その名も「GOLD STAR(ゴールドスター)」。同社のシンボルを掲げることで本気度を示す一方、新定番として確実なヒットが求められた製品の商談用資料を見ていこう。
ビール系飲料には「ビール」「発泡酒」「第三のビール」の3種類がある。ビールの原料である麦芽の使用率を下げたものが発泡酒。発泡酒に別のアルコール飲料を加えたもの、あるいは麦芽以外の原料で醸造したものが第三のビールだ。
少しややこしいのだが、第三のビールにも3つの波(トレンド)があったらしい。第1の波はビールや発泡酒より安い価格を打ち出したもの。サッポロビールの製品では2004年発売の「ドラフトワン」がそれに該当する。第2の波は、価格の安さだけでなく味わいなどを追求した製品で、08年の「麦とホップ」がそれだ。第3の波は企業の看板を背負い、次世代の主力商品としての本気を訴える製品。それこそが20年2月に発売された「ゴールドスター」というわけだ。
営業や開発も巻き込んでの資料作り
今回紹介するスライドは、マーケティングや開発の担当者が、新製品の開発背景や狙いを営業担当者に説明するためのものだ。営業担当はこの資料を自分なりにカスタマイズして、コンビニやスーパーのような大手量販店との商談に利用する。
「私たちのチーム全員に加え、営業や開発も巻き込んだので、資料作成に関わったメンバーは30人ほどになった」と話すのは、サッポロビール新価値開発部 第1新価値開発グループ主任の新木絵理氏だ。会社のイメージそのものとも言える「ゴールドスター」を掲げるだけに「サッポロの覚悟を携えた商品なので、営業部隊に納得してもらわないといけない。そのためのストーリーを伝えようと考えた」と新木氏は言う。
今回見せてもらったプレゼンテーション資料は、なぜその製品が求められているのかを分析するデータの提示から始まっている。新製品のプレゼン資料でよく目にする構成だ。第三のビールの中で王道を目指すという位置付けの製品だが、プレゼン資料も王道の手法に沿っていると言えるだろう。
資料では18年ごろから第三のビール市場が伸びを見せており、同時に企業の本気を示す製品へのシフトが進んでいると分析している。さらに、消費者への意識調査から「メーカーの自信や本気が感じられる商品」には購入意欲が高まっていることを示している。これらのデータから、サッポロビールの本気を感じさせる新商品の必要性を訴えている。18年は他社の第三のビールも新製品が登場し、大ヒットした年だ。ライバル商品に対抗するという意味も含んでいるのだろう。
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