本連載をベースに、大幅加筆・再編集した書籍「“秒速”プレゼン術」(日経BP)が2020年6月22日に発売となった。成果を引き出す効率化の技法「“秒速”プレゼン」をはじめ、多彩な新世代のプレゼン戦略を収録している。その中から、withコロナ時代に求められるオンラインプレゼン術を紹介しよう。

テレワークが広がったことで、オンライン会議ツールの「Zoom」「Teams」などを通したオンラインプレゼンのスキルが求められる時代になりつつある
テレワークが広がったことで、オンライン会議ツールの「Zoom」「Teams」などを通したオンラインプレゼンのスキルが求められる時代になりつつある
今回のポイント
1.オンラインでは空気感が読みづらい
2.全体的にテンポを遅らせて話す
3.5分程度のブロックに分ける

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、一気にテレワーク(在宅勤務)が加速した。我々の働き方に大きな変化を与えたといっていいだろう。この流れは、例え収束の兆しが見えてきたとしても、ある程度は継続していくはずだ。誰もが「わざわざ先方に出向かなくても面会はできる」という利便性を実感し始めているからだ。

 出社している状態で社内の同僚と会議をするなら、会議室への移動は5分程度だろう。ところが商談や打ち合わせで他社を訪問するとなると、そうはいかない。片道で30分や1時間は当たり前。距離によっては、1時間の打ち合わせのために、半日を費やすことも珍しくない。

プレゼンのオンライン化が加速

 この移動という時間の無駄を排除する流れは、間違いなく加速する。オンライン会議やテレワークの効率のよさは、散々言われてきた。僕も以前からそのメリットをさまざまな記事で繰り返し書いてきた。新型コロナウイルスによって、広く認識されたのは、少々皮肉ではある。

2020年4月末に開催した「日経クロストレンド・ミートアップ」の様子。オンライン会議ツール「Zoom」でプレゼンを実演した
2020年4月末に開催した「日経クロストレンド・ミートアップ」の様子。オンライン会議ツール「Zoom」でプレゼンを実演した

 新型コロナ騒動が続く中で、オンラインのプレゼンを繰り返し行い、試行錯誤しながら最適解を探し、ずいぶんコツがつかめるようになってきた。その成果の一つが、2020年4月末に開催したイベント「日経クロストレンド・ミートアップ」だ。

 本来は、東京都内のイベントスペースで開催する予定だったが、緊急事態宣言下の感染拡大を防ぐため、オンライン会議ツール「Zoom」を使ってプレゼンを披露した。今後、新型コロナの影響が続けば、同様にリアルイベントをオンラインに切り替えるというケースは増えていくだろう。

 幸いにも日経クロストレンド・ミートアップでは、一定の手応えを得ることができた。担当者によると、ご覧いただいている方の離脱が「過去のオンラインセミナーで最も少なかった」という。ここでは、離脱を少なくするいくつかの工夫の中で、うまく機能したと思われるものを紹介していく。

オンラインでは表情が読めない

 従来の一般的なプレゼンでは、相手が目の前にいる。身ぶり手ぶりも使えるし、相手の表情を読み取りながら、進めていくことができる。オンラインもある程度の表情は読めるが、空気感が全く違う。

Teamsを使ってプレゼンをしている様子。こうしたオンラインプレゼンでは、聞き手の画面が小さく表示されるので、表情をつかむのが難しい
Teamsを使ってプレゼンをしている様子。こうしたオンラインプレゼンでは、聞き手の画面が小さく表示されるので、表情をつかむのが難しい

 リアルなプレゼンでは表情を読み取って、質問を挟んでもらうこともできる。オンラインでは、基本的にそうはいかない。一方通行で話して、ある程度のところで質問を聞くような形になる。

 リアルなプレゼンならワンテンポおいて、笑顔を作って聞き手の顔を見ることがある。これが聞き手の注意を引くうえでも良いアクセントになる。プレゼンに慣れた人の上級テクニックだ。オンラインで同じことをすると、うまくいかない。下手をすると操作に戸惑っているか、回線の調子が悪くて固まってしまったかのように見えてしまうのだ。

 とにかく、間合いがつかめず、間が持たない。これを理解したうえで、構成を考える必要がある。

スライドと話しのテンポを遅らせる

 オンラインプレゼンではZoomやTeamsなどの遠隔会議ツールを使って行うことになる。話し手や聞き手がリモートワークの場合は、自宅のインターネット回線でアクセスすることになる。これらはあくまでもベストエフォート回線で、微妙なタイムラグが発生したり、途切れたりすることもある。

 スライドを切り替えるときなどには、意識して1~2秒の間を挟んだ方がよいだろう。声が聞き取りづらいこともあるので、普段よりややゆっくり話す。

 リアルなプレゼンにおいては、ある程度早口でかまわないが、ときにはテクニックとして聞き手との空気感を生み出すための間を作る。これに対してオンラインプレゼンでは相手にしっかり伝えるための間を「常に確保していく」必要がある。そんな考え方の転換が必要なのだ。

 もちろん、スタート前には「聞き取りづらいときはいつでもおっしゃってください」と念を押しておこう。

オンラインの集中力は3分が限界

 僕は、YouTubeのチャンネルを持って活動している。プレゼンの技法だけでなく、Officeソフトやデジタルガジェットの活用法などを紹介している。

 YouTubeの管理画面を見ると、動画がどのように視聴されているのか、各種データを確認できる。もっとも興味深いものの1つが「視聴者維持率」のグラフだ。これを見ると、人気のある動画でも、3分を経過すると視聴者は半分程度に減っていく。そこからの離脱率はゆっくりなのだ。

YouTube 配信者の管理画面で確認できる「視聴者維持率」。動画の内容にもよるが、 大半の視聴者は3分程度で離れてしまう、という傾向があるようだ
YouTube 配信者の管理画面で確認できる「視聴者維持率」。動画の内容にもよるが、 大半の視聴者は3分程度で離れてしまう、という傾向があるようだ

 つまり、半数ほどの人は、動画を見る集中力が3分程度しか持たないと想定される。だからこそ、開始3分が勝負なのだ。それまでの間に持てるプレゼン技法を尽くして、聞き手の心をつかまないといけない。

 もちろん、興味のある内容なら集中力はもっと持つ。オンラインのプレゼンを聞くビジネスパーソンは、YouTubeの視聴者よりも「見る気持ち」が強いと考えられる。それでも、集中力は5分程度だと想定して臨むべきだろう。

 オンラインのプレゼンでは、相手は何をしているか分からない。画面を見ているように感じても、ブラウザーやメールを見ていることもあるのだ。どちらにしろ、自分が思っているより、相手は集中していないと考えた方がいい。画面を見ていても、集中しているのといないのとでは、理解度や伝わり方が大きく違ってくる。

5分ブロックでプレゼンを組み立てる

 相手の集中力を高め、関心を引くためには、スライドをこまめに切り替えた方がよい。スライドに文字を大量に書くのではなく、文字は短いキーワードを記入する程度にとどめる。細切れの情報をどんどん伝えることで、聞き手は目が離せなくなる。集中してくれる時間が長くなるし、間も持ちやすくなるのだ。

 スライドを細かく切り替え、合間に一呼吸おく。そうすることで、聞き手から質問を受ける、あるいは「今の部分は聞き取れなかった」という反応を得やすくなる。ネット越しのオンラインプレゼンで生じる相手との距離感を埋めることができるのだ。

 全体の構成にも一工夫を加えたい。前述のように、集中力は5分しか持たないと考えて、5分ブロックで組み立てていくべきだ。

 例えば、プレゼンの時間が20分なら「5分×4」を目安に組み立てる。パート1、パート2といった形で区切るといいだろう。5分ごとに、感想や質問を聞く小休止を挟むのだ。

 20分の説明を連続で続けてしまうと、最後に質問を受け付けるにしても、どのスライドに対する質問かをいちいち確認していかなければならなくなる。「5枚目くらいのスライドにあった○○ですが……」という質問が来て、スライドをめくり直して回答するといった、面倒なやりとりが発生する。

 5分区切りで質問や感想を聞いていけば、スライドを振り返る必要はほとんどないだろう。しかも、質問の出方で相手の反応がつかめるし、必要なら「○○さんはいかがですか?」と振ることもできるのだ。

■5分の区切りでメリハリを付ける
■5分の区切りでメリハリを付ける
5分区切りで質問や感想を聞いていけば、オンラインプレゼンにメリハリを付け、聞き手の集中力を維持しやすくなる

(写真/shutterstock)