プレゼンテーションのスライドで表示する代表的なビジュアル素材といえば、グラフだ。世の中の大半のスライドで使用しており、切っても切れない関係にある。訴えたいことを聞き手に正しく伝えるには、グラフをどう活用すればいいのか。プレゼンの達人である戸田覚氏が解説する。
2.タイトルを消した状態でも伝わるかを検証する
3.ここぞという時にアニメーションを使う方法も
プレゼンでは情報に説得力を持たせる裏付けとして、数値を伝えることが多い。売り上げ、利益の推移、シェア、性能の比較など、スライドの中で数値を見せるためにグラフが使われる。
PowerPointでも簡単に作成できるし、Excelから挿入する手段もある。確かにグラフを使えば、それなりのスライドに仕上がった気になるが、何気なく作り、スライドに貼り付けて終わりにしているケースも多い。そんなにお手軽でいいのだろうか?
例えば、製品シェアや1年間の売り上げ推移は、会社や担当部署にとっては、とても重要で意味のあるデータだ。それをなんとなくグラフを貼り付けて終わりにしているのは、もったいないことこの上ない。せっかく作り、見せるのだから「大切なデータがきちんと伝わること」にこだわるべきだ。
「見やすい」と「伝わりやすい」は違う
では、どんなグラフなら意図が伝わるのか。誰に質問しても「一目見れば分かるグラフだ」という答えが返ってくる。そう言うのは簡単だが、実際には難しい。重要なポイントは、実は「見やすい」と「伝わる」は少し違っていることだ。
具体例を紹介しよう。下図を見て何を言いたいのか分かるだろうか? このスライドでは、「伝わる/伝わらない」を実感してもらうために、あえて本来あるはずのタイトルを消している。これだけでは何が言いたいのか理解できないだろう。
下の図では、少し工夫をして2つ並べた。これで何が言いたいか伝わるだろうか? 多くの人が「これでも、さっぱり分からない」と思うはずだ。発表者の意図を考えると「2つの円の違いを比べたいのだろう」とまでは思うかもしれない。しかし、それが限界だ。
今度は、さらに工夫を重ねてグラフの一部を色で目立たせ、さらに矢印を加えた。ここまでくると、多くの人が「なるほど、シェアが伸びたことを言いたいのか」と理解してくれる。
「文字で分かればいい」という妥協はだめ
ここまでは、タイトルがなくとも分かる「良いグラフ」を検証してきた。ここで、先ほどの最初のものにタイトルを付けてみよう。すると、当然ながら、何を言いたいのかが理解できるようになる。グラフ自体の見た目では意図が伝わりにくいのに、文字の説明でおぎなう状態だ。ビジュアルとして伝えることには成功していないのだ。
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