ここまで9回にわたり、プレゼンテーションの組み立て方やスライドの作成方法を紹介してきた。テクニックを身に付け、ノウハウを知るだけでなく、新たな気づきを得るには優れた具体例から学ぶことも大切だ。あるメーカーのプレゼンに感銘を受けたという戸田覚氏が、その担当者を直撃した。
2.内容と分量を把握する「台本」を作るケースも
3.話す内容は一語一句覚えず、自分の言葉で
今回はプレゼンの事例を紹介しよう。「Anker(アンカー)」というスマホの周辺機器ブランドをご存じだろうか。米グーグル出身者らが設立したメーカーの製品で、主力商品であるモバイルバッテリーの性能の高さに定評がある。
日本法人のアンカー・ジャパンは18年11月にマスコミ向けの事業説明を行った。僕はその際に聞き手として参加していたのだが、スライドの完成度が高く、感銘を受けた。本連載でこれまで伝えてきたことが、ほとんど実現されているのだ。
最近出版した「ヒット商品のマル秘プレゼン資料を大公開!」(インプレス)でも、多数のプレゼン名人に取材をさせてもらったが、本の中で紹介した例と比べても全体的な完成度でアンカー・ジャパンはトップクラスに入るだろう。どのようにスライドを作っているのか。ぜひその裏側を見せていただこうと取材をお願いした。
スライドを主に作ったのは事業戦略本部マーケティングマネージャーの瀧口智香子氏。「長時間のプレゼンは、聞いていただくのも大変なので、基本的にはマックスで60分だと考えています。今回は45分という時間を大前提にしました」と瀧口氏。まずは時間を決めた上で、最初に全体の流れを考えていったという。下記の図がその構成案(プログラム)だ。
構成案は、大まかな内容とそこに割く時間を提示している。スピーカーは、代表取締役の井戸義経氏と執行役員事業戦略本部統括の猿渡歩氏の2人だ。瀧口氏が作った構成案をたたき台にしながら、スピーカー2人とミーティングを重ね、それぞれの内容に割り当てる時間を調整していった。
台本となる「スクリプト」で構成を詰める
次に、構成案を元に、より細かな内容をまとめるためのスクリプト(台本)を作っていく。今回は特別にその資料も見せていただいた(下図)。ここにはスライドが貼り付けられているが、これは、事後に加えたものだ。
内容を見ると、話し言葉で書かれている。「話し手2人のクセを把握した上で、話し言葉でスクリプトを作りました」(瀧口氏)。井戸氏は、緊張するとゆっくりになり、猿渡氏は逆に早口になる。発表者のキャラクターに合わせた話し言葉で作ることで、各スライドで話せる内容のボリュームが的確に決まってくるという。
話す内容の決定権はスピーカーの2人にあるが、多忙で時間が取れないことが多いため、スクリプトの作成は瀧口氏にお願いしているという。「その内容を精査して、変更してほしいポイントがあれば直してもらいます」(猿渡氏)という方法を取っている。
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