プレゼンテーションは読ませるものではなく、聴かせるもの。この連載を通して伝えてきたテーマの1つだ。これを実践するための鍵となるのが「PowerPoint(パワーポイント)」の文字サイズ。プレゼンの書籍を多数執筆してきた戸田覚氏が、注目を引き付けるスライド作りを指南する。

プロジェクターで投影すると細かい文字がつぶれやすくなる。10メートル先のスクリーンに表示する場合で、1文字が5センチメートル以上になることが理想だ(写真/Shutterstock)
プロジェクターで投影すると細かい文字がつぶれやすくなる。10メートル先のスクリーンに表示する場合で、1文字が5センチメートル以上になることが理想だ(写真/Shutterstock)
今回のポイント
1.細かい文字は投影時につぶれやすい
2.読みやすさ優先なら文字は30ポイント以上に
3.スライドマスターで効率的にサイズ変更

 「文字が小さすぎて読めない!」というメガネ型ルーペのCMが一時期話題になっていたが、実はプレゼンのスライドにも同じことが言える。

 そもそも、適切な文字サイズを考えてスライドを作っている人が非常に少ない。プロジェクターで投影する場合、細かい文字がつぶれてしまい、とても読みづらいことがある。例えば、少し古いプロジェクターや小型のプロジェクターを使うとき。解像度が800×600ピクセルなどと低いことがあり、パソコンの画面よりも表示が粗くなる。会議室にスクリーンが用意されておらず、表面に凹凸がついた壁に投影することもある。

 個人的にも、そういう場面に何度も遭遇している。念のために改めて強調しておくが、読めないほどの文字なら、そんな文章は入れない方がいい。なんとか読めるけれど、目をこらさないとわからない文字も同様だ。これまでにも書いてきたように、そもそもスライドに文字を書きすぎるのはお勧めしない。読んでいる間、話者の説明が頭に入ってこなくなるのだ。

 これが読ませることが目的の「Word」の資料なら話は別だ。基本的にはA4用紙に印刷することを前提としたツールであり、標準の文字サイズのままで10ページを超えるリポートを出力しても、読みづらくはない。パソコンの画面でWord文書を読む場合でも、極端な縮小表示にしない限り、文字がつぶれることはない。

10メートル先で文字幅は5センチ

 では、プレゼンのスライドで適切な文字サイズはどの程度だろう。正確なデータはないが、聞き手となる多くの人の視力は、0.8~1.2前後であろう。もちろんこれは、ビジネスの現場を想定した話なので、メガネやコンタクトで補正したあとの値だ。

 視力と文字サイズの関係を、視力検査の指標で考えてみよう。健康診断でおなじみのランドルト環と呼ばれる「C」のマークを読み取る検査だ。この検査の指標では、視力1.0の人なら、5メートル離れたときに直径約0.75センチメートル、10メートル離れたときに1.5センチメートルのCマークが識別できるとされている。

 とはいえ、Cマークの切れ目は判別できても、同じサイズでもっと複雑な形状の文字の判別は難しいだろう。10メートル四方、つまり100平方メートルのミーティングルームを使うと考えてほしい。50~70人を収容できる規模の部屋だ。もう少し視力が弱い人もいる可能性も考慮すれば、1.5センチメートルの文字ではほとんどの人が読めないことになる。10メートル先で読めるようにするには、一文字の幅は5センチメートルはあった方がいいのではないか。

 部屋の広さやスクリーンサイズの関係にもよるが、PowerPointの文字サイズ設定の目安としては、最低でも24ポイント程度にしておきたいところだ。なお、24~28ポイントの文字を幅2メートルのスクリーンに表示すると、4~5センチメートル幅になる。僕としては、それ以上に大きな30~60ポイント程度の文字を使ったスライドを作るのが好みだし、見やすいと思う。

プレゼン時の話に集中してもらうには、スライドには細かい文字を書きすぎないこと。とにかく大きな文字サイズで、最も大事な一言を提示するくらいがちょうど良い
プレゼン時の話に集中してもらうには、スライドには細かい文字を書きすぎないこと。とにかく大きな文字サイズで、最も大事な一言を提示するくらいがちょうど良い
有料会員になると全記事をお読みいただけるのはもちろん
  • ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
  • ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
  • ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
  • ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー
ほか、使えるサービスが盛りだくさんです。<有料会員の詳細はこちら>